研究課題/領域番号 |
23350049
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
片岡 一則 東京大学, 大学院・工学系研究科, 教授 (00130245)
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研究分担者 |
長田 健介 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特任准教授 (10396947)
宮田 完二郎 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助教 (50436523)
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キーワード | 生体関連高分子 / ナノバイオ材料 / 高分子構造・物性 / ドラッグデリバリー / 自己組織化 |
研究概要 |
H23年度は、剛直な円筒形アニオン性高分子であるsiRNAと可撓性ポリカチオンであるポリエチレングリコール-ポリ-L-リシンブロック共重合体(PEG-P(L-Lys))からなるポリイオンコンプレックス(PIC)の構造解析を中心に進めた。このPICはPEG-P(L-Lys)の厳密な重合度制御に基づいて調製され、得られた種々のPICの構造は蛍光相関分光法(FCS)や分析超遠心法(AUC)により精密に解析された。Cy3標識siRNAを使用したFCS解析の結果より、P(L-Lys)重合度により会合体形成挙動が異なり、P(L-Lys)重合度により複数のsiRNA分子から成るPIC形成や、siRNA1分子からなるPIcが形成されることが確認された。この1分子siRNAからなるPICに対してAuC解析を行うことでPIC分子量を測定し、PIC中に含まれるPEG-P(L-Lys)分子数を算出した。結果として、P(L-Lys)重合度により、1つのPIC中に1分子のPEG-P(L-Lys)あるいは2分子のPEG-P(L-Lys)を含むよう制御できることが明らかになった。これより単分子siRNAからなる単位PICのキャラクタリゼーションと調製方法の確立に成功した。一方、P(Lys)の重合度40の組成に対して、L体、D体、DL体をそれぞれ合成し、PIC構造に対するPEG-(PLys)キラリティの効果を検証した。FCSによりPICの会合状態を調べたところ、L体、D体では1分子のsiRNAがPICに含まれるのに対し、DL体ではPIC中のsiRNA会合数が増加する傾向にあることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光相関分光法と分析超遠心解析により、PLys重合度を調整することでsiRNA1分子から成る単位PICの構築が可能であることを明らかにした。よって、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに分子量が制御されたPEG-P(Lys)を用意し、siRNAとのPIC形成を検討してきた。その結果、分子量12000のPEGの場合、P(Lys)の重合度を制御することで、単一のsiRNAを含むPICが得られることを確認した。これを受け、H24年度はPEG分子量の効果に注目し、PICの生体環境下での安定化に注力する。具体的には、PEG分子量20000、40000などから成るブロック共重合体を新たに合成し、塩の有無や擬似生体環境下におけるPICの構造安定性を評価する。さらに生物学的評価を進め、siRNAキャリアとしての可能性を検証する。
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