研究概要 |
K3,3グラフは4環が3重に縮合した構造の特殊なトポロジーとして知られ、幾何学的視点から興味深い構造である。また、自然界には類似した構造の環状ペプチドが存在し、そのトポロジーが熱的耐性の向上に影響していると考えられている。このようなトポロジーとそれに起因する物性の差異との関係の解明のために、その構築法を確立することは重要である。今回、K3,3グラフ構築のため、6分岐テレケリクスを原料とした合成スキームを考案した。しかし、環化反応において反応点の増加による多量体の形成などにより、分離や解析が困難となることが予想される。そこで、本研究では、単一サイズの分岐高分子の末端官能基化により分岐テレケリクスを合成し、静電相互作用による自己組織化と共有結合化により、K3,3グラフを初めとする多環縮合型トポロジーの構築を行った。また、トポロジーの異なる高分子の流体力学的体積の違いに注目し、分取SECによる分離を検討した。 まず、主鎖にエイコサンジオールを用いて、保護、エステル化、脱保護やエーテル化の一連の反応により、末端にOH基を有する6分岐単一サイズ高分子を合成した。次に、無水トリフルオロメタンスルホン酸により、トリフラートエステル末端へと変換した後、N-フェニルピロリジンを反応させ、N-フェニルピロリジニウム塩末端を有する単一サイズ6分岐テレケリクスを合成した。そして、6分岐テレケリクスをジカルボキシレートやトリカルボキシレートとともに加熱還流することで末端イオン性部位を共有結合へと変換し、6分岐デンドリティックトポロジー、αグラフを含むトリサイクリックトポロジー、さらにK3,3グラフを含むテトラサイクリックトポロジーを得た。また、分取SECにより各トポロジー異性体生成物の単離を試みた。
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