研究課題/領域番号 |
23350051
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
山岸 忠明 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90220251)
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研究分担者 |
生越 友樹 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (00447682)
高田 晃彦 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教 (20254427)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 分子カプセル / 集積化 / 液晶構造 / 三次元規則構造 |
研究概要 |
1)新規な環状分子の自己組織体の合成 親水性部として水酸基を,疎水性部として長鎖のアルキル基を選択し,両親媒性カリックスアレーンampCRを合成した。これは,レゾルシノールと長鎖アルデヒドから合成する。合成に関しては,これまでの検討により定量的に合成できることを確認している。これを組織化する方法として,メタノールなど水溶性の有機溶媒中にampCRを溶解させながら水を添加することにより,自己組織化させた。ampCRの構造確認にはNMR測定を行い,自己組織化は光散乱測定を用いて検討した。さらに,ampCRの会合状態を詳細に観察するため,電子顕微鏡(SEM)および走査型プローブ顕微鏡(SPM)を駆使し,ampCRの分子構造(アルキル鎖の長さ)と会合状態の関係を詳細に検討した。 2)分子カプセルの集積化の検討 上記に示したampCRの環状部分は芳香環に囲まれた空間と水酸基を多数有し,糖鎖およびハロゲン化合物などの電子受容性分子と相互作用すると考えられる。この相互作用を利用し,分子カプセルを集積化させる方法として,オリゴ糖をampCRと共存させることを試みた。すなわち,分子カプセルを規則的に並べるため,液晶性セルロース誘導体を土台とする基盤の合成を行った。この基盤上の規則的な相互作用点として液晶構造を構築し,その特徴的な構造に沿って,分子カプセルを並べることを狙いとした。セルロース複合体とガラスの複合体を用いることで,液晶構造を固定化した基盤を合成することができた。基盤の形成は,反射光を利用するFT-IR装置(設備備品),走査型プローブ顕微鏡(SPM)およびSEM・TEM電子顕微鏡観察によってモルホロジーの観察を詳細に行うことで確認した。さらに,基盤上にampCRの分子カプセルを集積化させることを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
分子カプセル化の問題と新規な環状分子の合成 親水性部として水酸基を,疎水性部として長鎖のアルキル基を選択し,両親媒性カリックスアレーンampCRを合成した。これをカプセル化する方法として,アルコールやアセトンなど水溶性の有機溶媒中にampCRを溶解させながら水を添加することにより相分離状態を作り出し,ミセルのような分子カプセルを形成させる予定であった。溶媒をアルコール/水系とすることで,ミセル状の分子カプセルの形成を確認した。しかしながら,他の有機溶媒ではampCRが凝集せずに分子カプセルとならなかったり,ジエチレンオキサイド系にするとファイバー状の組織体が形成する場合もあった。このように,現状では分子カプセルを再現よく効率的に構築するに至っていない。そこで,分子カプセル形成の再検討および新たな環状化合物の探索を行った。分子カプセル形成の再検討として無機物を中心に分子カプセルを形成させること,および,新たな環状化合物としてシクロデキストリン誘導体を利用することとした。
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今後の研究の推進方策 |
1)新しい環状化合物の合成と分子カプセル化の検討 新しい環状化合物としてシクロデキストリン誘導体を利用し,これを自己組織化させて分子カプセルを構築することを目指す。既に,液晶性置換基を導入したシクロデキストリン誘導体の合成に成功しており,これを分子カプセル化する方法を検討してゆく。液晶性置換基を環状骨格の下部に選択的に導入することで,環状部分における相互作用点を阻害することのないように分子設計した。上部の環状部分でのホストーゲスト相互作用により,分子カプセルの構築を目指す。 2)基盤上への集積化 液晶構造を保持した基盤上に規則的な相互作用点として,液晶構造をさらに際立たせる官能基を導入し,その官能基に沿って分子カプセルを並べることを狙いとする。液晶を形成させる物質として,コレステリック液晶を形成するセルロース誘導体を用い,これが作る液晶構造と分子カプセルを集積させる基盤としての性能を評価する。特に,コレステリック液晶はらせん構造を作り周期性をもつことから,三次元的に規則構造を作り易いため,基盤上に分子カプセルを集積させる構造体して採用した。
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