研究概要 |
1. アニオン性膜分子の合成 ヘテロリン酸ジエステルからなるアニオン性膜分子を、アミダイト試薬にオレイルアルコールと、p-ホルミルフェニル-10-ドデカノールを反応させることで合成した。今後、膜分子前駆体を合成し、これを添加することでアニオン性ジャイアントベシクル生産系としての挙動を確認する。 2.ベシクル膜電荷の制御によるベシクル間分子輸送 膜組成として2種のリン脂質(POPC, POPG)を異なる比率で保有する、標的および運搬ハイブリッドベシクルを用意し、pHを酸性にするとそれぞれのベシクルの膜表面が反対の電荷を帯び、ベシクル接合とそれに引き続く融合が起こることを見出した。このことを利用して、運搬用のラージベシクルに内包した水溶性蛍光プローブが、標的のジャイアントベシクルに輸送されたことを、蛍光スペクトルの測定により確認した [Chem. Lett. 41 789, (2012)]。この成果は、ベシクル輸送で涸渇基質を標的ベシクルに導入する道を拓いたものといえる。 3.クレオチド枯渇ベシクルへの原料輸送による自己生産ベシクルの回帰性獲得 この方法を用いて、ヌクレオチドを内封した運搬用ベシクルを、原料が枯渇した自己生産後のベシクルに融合させ、融合後のベシクルにポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を施したところ、融合したベシクルの内部でDNAが増幅したことを内封した蛍光プローブの発光により確認した。これによりベシクル型人工細胞の自己生産ダイナミクスが回帰性を獲得したことになる。さらに、このベシクル分散液に、膜分子前駆体を添加することで、ベシクルの分裂が起こることも確かめられた。この結果により、繰り返し自己生産するベシクル型人工細胞の基盤が確立した。
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