研究課題
基盤研究(B)
バルキー置換基をもつ有機半導体として、tert-ブチル基を置換したテトラチアフルバレン(TTF)、ペンタセン、オリゴチオフェンを合成し、その有機トランジスタの特性評価を行なった。TTF、ペンタセンではよい特性は得られなかったが、オリゴチオフェンでは溶解性が向上し、自己集積単分子膜処理なしに無置換体と同程度の特性を実現することができた。有機電荷移動錯体を微粒子にして分散させる方法により有機トランジスタの電極とし、これまでの蒸着法ではつくれなかった、無機対イオンを含むカチオンラジカル塩・アニオンラジカル塩を電極とする有機トランジスタを作成した。カチオンラジカル塩・アニオンラジカル塩のどちらを電極とした場合も、ペンタセンやオリゴチオフェンにはホールが注入されてp型動作が見られ、C_<60>には電子が注入されてn型動作が見られた。マイナス電荷をもつアニオンラジカル塩からプラス電荷をもつホールが注入されたり、プラス電荷をもつカチオンラジカル塩からマイナス電荷をもつ電子が注入されるのは驚くべきことであるが、これらの有機伝導体が金属的伝導性をもっていると考えると理解することができる。トランジスタ特性がまったくシフトしないことから、金属的電荷移動錯体がいずれも真空レベルから4.8eVのところにフェルミエネルギーをもっていることが示唆される。有機アクセプターであるジシアノキノンジイミン(DCNQI)を活性層とし、インクジェット印刷によってCuI溶液を印刷して電極部分を金属的なDCNQI銅錯体としたセルフコンタクト有機トランジスタを作成し、既報のDCNQIのトランジスタより優れた特性を達成した。DCNQIやTTFなど単純な有機ドナー・アクセプターを蒸着するため、通常より低真空の蒸着を行ない、これらの分子が優れた薄膜トランジスタとなることを実証した。
2: おおむね順調に進展している
当初の目標であった電荷移動錯体を電極とする有機トランジスタにおいて興味ある知見が得られ、同一の有機伝導体の単体を活性層に、電荷移動錯体を電極に使用するn型のセルフコンタクト有機トンランジスタを実現することができた。
今後p型でもインクジェット印刷によって電荷移動錯体を電極にしたセルフコンタクト有機トンランジスタを実現し、シリコンで広く用いられている化学ドーピングのような方法を有機エレクトロニクスでも利用できる技術を確立する。化学ドーピングによって伝導性を実現する電荷移動錯体と、電界効果によって伝導性を賦与する電界効果トランジスタとに通底する伝導機構の解明を進める。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件) 学会発表 (2件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
Phys.Rev.B
巻: 85 ページ: 041504(6P)
10.1103/PhysRevB.85.014504
J.Phys.Soc.Jpn.
巻: 81 ページ: 023705(4P)
10.1143/JPSJ.81.023705
J.Mater.Chem.
巻: 21 ページ: 18421(4P)
10.1039/c1jm12783g
Appl.Phys.Express.
巻: 4 ページ: 115101(3P)
10.1143/APEX.4.115101
巻: 84 ページ: 094518(6P)
10.1103/PhysRevB.84.094518
Bull.Chem.Soc.Jpn.
巻: 84 ページ: 1049-1056
10.1246/bcsj.20110176
Phys.Chem.Chem.Phys.
巻: 13 ページ: 14370-14377
10.1039/C1CP21507H
巻: 80 ページ: 054706(4P)
10.1143/JPSJ.80.054706
Chem.Lett.
巻: 40 ページ: 428-434
10.1246/c1.2011.428
巻: 83 ページ: 012505(4P)
10.1103/PhysRevB.83.012505
New J.Chem.
巻: 35 ページ: 1315-1319
10.1039/C0NJ00858C
http://www.op.titech.ac.jp/lab/mori/index.html