研究課題/領域番号 |
23350061
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
森 健彦 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (60174372)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機トランジスタ / 電荷移動錯体 / 有機半導体 |
研究概要 |
活性層にTMTTFを用い電極部分にTCNQを蒸着してセルフコンタクト有機トランジスタを実現した。移動度は0.5 cm2/Vs程度であったが、TMTTFの代わりにHMTTFを用いることによって移動度は1.7 cm2/Vsに改善された。 アンバイポーラ有機半導体として、ブロモインジゴおよびフェニルインジゴを合成し、そのトランジスタ特性を調べた。5,5'-ジブロモインジゴは移動度0.2-0.3 cm2/Vs程度のバランスのとれたアンバイポーラ特性を示した。フェニルインジゴでは電子・ホール移動度がともに0.5 cm2/Vs程度の優秀なアンバイポーラ有機トランジスタを実現することができた。 DBTTF、HMTTFのトランジスタ特性の温度依存性を測定し、その解析から表面処理の違いによるトラップ状態密度の変化について検討した。適当なトラップ状態密度を仮定することにより、トランジスタ特性の温度変化を計算できることを明らかにした。 有機半導体として脚光を浴びているBTBTが、電気化学的方法によって(BTBT)2PF6という組成の安定でロッド状電荷移動錯体をつくることを見出し、そのキャラクタリゼーションを行った。この物質は室温で1400 S/cm程度の高い伝導度を示すが、これからドリフト移動度を算出すると5 cm2/Vs程度となる。150 K付近で抵抗ジャンプがみられるが、それ以下でも電気抵抗の温度変化は平坦であり、50 K以下で半導体化する。抵抗ジャンプはアピエゾンでカバーすることで抑えられ、50 K付近まで金属的となった。ESR、高圧伝導度などについても詳細な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
同一の有機伝導体の単体を活性層に、電荷移動錯体を電極に使用するp型のセルフコンタクト有機トンランジスタを実現することができた。p型・n型ともに印刷法も可能であることが実証できた。 温度変化まで含めて有機トランジスタの特性を理論計算する方法が確立でき、トラップ状態密度などに関して多くの知見が得られた。 有機半導体BTBTが高伝導の電荷移動錯体をつくることを発見することができ、有機半導体分子を用いた有機伝導体作成に大きく展開できる可能性が出てきた。
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今後の研究の推進方策 |
有機半導体BTBTから高伝導の電荷移動錯体ができるという予想外の発見を受けて、有機半導体を用いた電荷移動錯体の作成について広範な検討を行うこととした。 有機トランジスタの特性を理論計算する方法についてもいろいろな実例に適応して展開する予定である。 セルフコンタクト有機トランジスタの研究についても順調に進展している。今後フレキシブル基板上へのデバイスの作成や、印刷法の適用についても検討を進めていく予定である。
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