研究課題
申請者らは、分子認識を利用した、これまでに例のないユニークな単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分離法をデザインし、検討を進.めてきた。具体的には、SWNTとピンセット型ジポルフィリン化合物からなる超分子を鍵とする、SWNTの可溶化、ならびに、それに伴うSWNTの構造選別である。この方法論において分子ピンセットは、SWNTのらせんの向き(右巻き、左巻き)と直径を同時に識別しており、ごく最近、SWNTの単一エナンチオマーの純度を高めることに成功した。本申請では、その識別能のさらなる向上を目指して、分子ピンセットにおける2枚のポルフィリンを平行に配置し、その面間隔を自在に変えることのできる"分子ノギス"を設計した。これを従来のSWNTの分離に用いるとともに、グラフェンの層構造の分離にも適用する。平成23年度のカーボンナノチューブの分子ピンセットによる選別では、その選択性のさらなる向上が達せられ、その成果がNanoscaleに掲載され、また、2011年第10号のinside cover pictureに採択され、報告者らの成果を広くアピールすることができた。分子ノギスの合成に関しては、まず、アントラセンの9.10位に2つのカルバゾールを3位で結合させ、スペーサー1を合成した。次に、1の2つのカルバゾールの6位を臭素化し、これとポルフィリンのボロン酸エステル化体との鈴木宮浦カップリング反応により、アキラルな分子ノギス2と光学活性分子ノギス(R)-,(S)-3を合成した。現在、2を用いたグラフェンの抽出と3を用いた単層カーボンナノチューブの抽出を行っているところである。グラフェンの抽出については、超音波照射や溶媒など条件検討を進めており、また、AFM,ラマンスペクトル、STEMなどによる層数や面積の評価についても検討を行っている。
2: おおむね順調に進展している
1つの分子ノギスを合成することにより合成法を確立でき、各種スペーサーを有する分子ノギスを合成する素地が固まった。また、このように合成した分子ノギスを用いたグラフヱンやカーボンナノチューブの選別をすでに始めており、研究は順調に進展している。
合成した分子ノギスによるグラフェンやカーボンナノチューブの抽出条件に関して若干検討した後、抽出された炭素材料の構造をスペクトルや電子顕微鏡により特定する。その結果を分子ノギスの分子設計にフィードバックし、新たな分子ノギスを合成し、炭素材料の抽出、評価というサイクルで検討を進める。このような研究の進め方は、分子ピンセットによるカーボンナノチューブの選別と全く同様である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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http://www.shiga-med.ac.jp/~nkomatsu/indexj.htm