研究課題
申請者らは、分子認識を利用した、これまでに例のないユニークな単層カーボンナノチューブ(SWNT)の分離法をデザインし、検討を進めてきた。具体的には、SWNTとピンセット型ジポルフィリン化合物からなる超分子を鍵とする、SWNTの可溶化、ならびに、それに伴うSWNTの構造選別である。この方法論において分子ピンセットは、SWNTのらせんの向き(右巻き、左巻き)と直径を同時に識別しており、ごく最近、SWNTの単一エナンチオマーの純度を高めることに成功した。本申請では、その識別能のさらなる向上を目指して、分子ピンセットにおける2枚のポルフィリンを平行に配置し、その面間隔を自在に変えることのできる“分子ノギス”を設計した。これを従来のSWNTの分離に用いるとともに、グラフェンの層構造の分離にも適用する。平成23年度に分子ノギスの合成法を確立したのに続き、24年度は、それを用いた SWNT の選別を行った。その結果、これまでに行ってきた分子ピンセットを用いた分離から予想されるとおり、右巻き、左巻きと直径の選別がなされ、比較的大きな直径(1.0 nm 以上)を有する光学活性 SWNT が得られた。一方、これまでの結果からは予想できなかった金属的な SWNT が半導体的なものに比べ、優先的に得られた。以上のことから、光学活性分子ノギスは、SWNTのらせんの向き(右巻き、左巻き)と直径のみならず、電気的物性(金属、半導体)をも識別するということが明らかとなった。この成果は、J. Am. Chem. Soc. に掲載されるとともに、アメリカ化学会会員向けの雑誌である Chemnical & Engineering News (March 25, 2013) にも取り上げられた。
2: おおむね順調に進展している
2枚のポルフィリンを有する分子ノギスによるSWNTの分離に関して、非常に興味深い結果を得、すでに論文発表を終えた。また、2枚のポルフィリンをピレンに代えた分子の合成を終え、これも金属的SWNTを選択的に抽出することを明らかにし、現在、論文作成中である。
申請書にある計画通り、今年度は、これまでに合成してきたポルフィリン、もしくはピレンを有する分子ノギスを用いたグラフェンの層数による分離を試みる。
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