本研究は、ミトコンドリアを1週間以上観察し続けることができる蛍光プローブを開発すること、さらに、①二光子励起により三次元空間内での動的挙動が解明できる、②pHや共存イオンの変化により蛍光のOn/Offが制御できるというさらに高度な機能を付加した蛍光プローブを開発することを目的としている。 平成24年度は、ミトコンドリアの膜電位の変化によりミトコンドリアへの吸脱着が制御できる色素の開発に取り組んだ。前年度の研究で開発したビフェニルの誘導体は、ミトコンドリアの活力の指針の一つである膜電位を低下させると、ミトコンドリアを離れ核に移行するという特性と、高い二光子蛍光効率とを併せ持つことが明らかになった。そこで、このビフェニルの誘導体を二光子励起によるイメージングにおいて膜電位のモニタープローブとして利用できるようにするために、感度の定量化を行った。その結果、一光子励起により膜電位の変化を高感度でモニターできるとされているシアニン系色素、JC-1とほぼ同等の感度で膜電位の変化がモニターできることが明らかとなった。 その他にも、水中(ミトコンドリアに吸着していない状態)では蛍光を発さないが、ミトコンドリアに吸着すると蛍光を発するようになる色素の開発にも取り組んだ。具体的には、アセチレン結合で複数の芳香環をブリッジした化合物を種々合成し、細胞内での蛍光挙動の予備的な調査を行った。 また、作製したプローブの二光子励起蛍光イメージングへの適否をリアルタイムで観察し、分子設計へのフィードバックをいち早く行えるようにするために、スキャンブロック(ガルバノスキャナー)を購入し、二光子蛍光顕微鏡を自作した。
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