研究課題/領域番号 |
23350069
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
佐藤 久子 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (20500359)
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研究分担者 |
長岡 伸一 愛媛大学, 理工学研究科, 教授 (30164403)
田村 堅志 独立行政法人物質・材料研究機構, 環境再生材料ユニット ジオ機能材料グループ, 研究員 (80370310)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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キーワード | センサー / LB / イリジウム錯体 / 粘土鉱物ナノシート / 発光 / 酸素センシング / 光学分割 |
研究概要 |
シクロメタレート型イリジウム(III)錯体は有機EL素子などの燐光型発光材料として注目されている。本申請者はこれまでに長鎖アルキル基を有する中性の両親媒性Ir(III)錯体のラングミュア・ブロジェット(LB)膜を製造し、それを気体センサー膜として用いることに成功した。今回この発展として、より長寿命で堅固な層構造をもつ発光性薄膜をめざして種々の陽イオン性Ir(III)錯体と剥離化した粘土鉱物(無機ナノシート)とのハイブリッド化の検討をおこない、多色化をめざした酸素センシングデバイスのための研究をおこなった。今年度は色調変化のためのlayer-by-layer人工積層方法の検討をおこなった。今年度搬入した有機合成装置を用いて、3種(赤、青、黄)のIr(III)錯体を合成した。次に3種類のIr(III)錯体を用いた交互積層LB膜の製造と、それらの積層順番による色調変化の可能性について検討した。特に、2種のIr(III)錯体を用いた交互積層LB膜の製造と、それらによる色調変化の可能性について検討した。まずは単独の錯体と粘土鉱物とのハイブリッドLB膜を用いて積層数と発光強度が比例する条件を確立した。次に異種の錯体が一定の順序で配列した複合膜を製造するために、layer-by-layer人工積層膜を製造した。このとき、積層後のLB膜が基板から剥離しないように積層方法の技術開発をおこない、2種類の錯体の人工積層法に成功した。2種類の錯体の積層順序の可能な組み合わせを試み、錯体間のエネルギー移動効率を検討した。また、それらのLB膜による酸素センシングによる多色化を試みた。これらの主な成果はNew. J. of Chem. 36, 2467-2471 (2012)において報告し、hot article および裏表紙に採用された。科学技術振興機構主催のイノベーションジャパンに採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年に続き計画通り、人工積層法の開発を行い、研究成果を論文、学会、著書などにより報告した。発表した論文の中で、分担者2名と共同で執筆した王立化学会のNew J. Chemにおいて発表した2重発光特性に関する論文が、hot article および裏表紙に採択され、世界的にも高い評価を得ることができた。雑誌の裏表紙として、この研究を大きく宣伝することができ、愛媛大学全学、理学部、研究室のそれぞれのホームページにおいても掲載し、世間に公表をおこなった。さらには、学会発表(分担者と共同)、著書(2件)、総説(1件)など社会にむけての発信をおこなった。 本研究内容の産業シーズは、科学技術振興機構主催のイノベーションジャパンに採択されて発表をおこない、多くの企業関係者がブースを訪問して説明をおこなった。産業シーズの芽もはぐぐまれ、実用化にむけての取り組みも開始した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、Ir(III)錯体の発光色の異なる3種錯体の人工積層法を試みる。混合LB膜との比較により、layer-by-layer積層法の優位性をさらに明らかにする。人工積層法の改良をおこない、エネルギー移動などの観点や、粘土鉱物によるしきいの役割を明らかにし、最適なIr(III)発光色の積層順番を決定する。これらの評価に今年度購入した量子収率測定装置を活用する。 また、赤色系、青色系イリジウム錯体の合成(今年度購入した合成装置使用)し、さらに、それら錯体の光学分割をおこなう。粘土表面における2種類の錯体を用いて、エナンチオ選択的発光センシングをおこなう。 来年度搬入予定のLB膜の過渡的応答性測定ユニットを用いて、センサーとしての応答性向上をめざす。
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