研究課題
1.吸着熱・脱着熱の測定昨年度行ったゲート現象を示す物質の熱的性質と比較するために、通常の物理吸着系における熱的性質を評価した。異なる大きさのスリット状細孔をもつ活性炭素繊維(ACF)への273 Kと298 Kにおける二酸化炭素吸着等温線を測定し、吸着量と等量吸着熱の細孔径依存性を考察した。相対圧が0.015までは0.7 nmより小さな細孔のACFが高い吸着量を示したが、それより高い圧力ではより大きな細孔のACFがより高い吸着量をもった。これは小さな細孔径では吸着ポテンシャルが深く低い圧力で立ち上がるが、圧力が高くなると細孔容量が効果的に作用することに起因すると考えられた。2つの温度における吸着等温線を解析して得た等量吸着熱は、細孔径が大きくなると減少し、等量吸着熱が吸着ポテンシャルの深さに対応することを実証した。以上の結果から、昨年得たゲート現象を示すELM-11の吸着熱は0.9 nm程度の細孔径のACFと同等の吸着熱をもつが、ELM-11の吸着量はACFより多いので全熱量はより大きくなり、二酸化炭素吸着ヒートポンプ用の材料としてELM-11の優位性が明らかになった。2.ゲート現象の機構解明ELM-11の2段階ゲート現象について195 Kでの常圧までの二酸化炭素吸着等温線と298 Kにおける高圧吸着等温線を測定し、2段階ゲート現象におけるゲート開閉について吸着量変化と構造変化を調べた。また2段階目の等量吸着熱について計算し、1段階目の等量吸着熱と比較した。2段階目の構造変化も、1段階目と同程度の層間隔を拡張し、二酸化炭素が1段階目と同程度吸収されることがわかった。また、等温吸着熱も1段階目のものとほぼ同程度であることを明らかにした。このように二酸化炭素の吸着は窒素などの分子とは異なり、化学両論的な特異吸着が進行して一定の層間拡張が2段階で起きるということを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
ELM-11の2段階ゲート現象について、吸収量変化、構造変化および吸収熱を求め、1段階目のゲート現象の値と比較できた。また、活性炭素繊維が示す物理吸着における吸着熱と比較し、吸着熱の平衡論的解釈をまとめた。ELM-11では単位質量あたり、かつ、単位体積当たり効率的に二酸化炭素を吸収するので、大きな吸着熱が得られることがわかった。
実用的吸着ヒートポンシステムのための基礎データを得てきたが、さらに時間当たりの吸着熱変化や脱着に必要なエネルギー、水蒸気を除くための前処理に必要なエネルギーなど、本吸着材をヒートポンプシステムへの応用するための具体的な値を計算し、問題点、課題を挙げるとともに、既存のシステムに対する優位点などをまとめ、今後の開発への指針を得る
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