研究課題
1)Co_2メタネーション触媒の最適化多角バレルスパッタリング法を用いたCO_2水素化反応(CO_2+3H_2→CH_4+H_2O)の低温化に対して、触媒に担持される金属種(Ru、Co、Ni、Fe)の影響を担体にAl_2O_3微粒子(粒子径:3μm)を用いて検討した。いずれの試料にも金属ナノ粒子(粒径分布:約2~15nm、平均粒径:約8nm)が担持されていたが、触媒活性には差が現れ、RuにおいてCH_4生成温度は最も低下した。この結果に基づき、上記の担体に加え、アナターゼ(0,2μm)、およびルチル型TiO_2(7μm)、ZrO_2(1.5~4μm)、γ-Al_2O_3(1.5μm)、SiO_2(6μm)、MgO(2μm)にRuを担持し、触媒担体の影響を評価した。その結果、アナターゼ型TiO_2を用いた場合のCH_4生成温度が最も低く、CH_4収率が100%に達する温度は従来法(含浸法)より200℃以上低い160℃まで低下した。なお、CH_4生成温度はRuナノ粒子サイズに影響され、特に6nm以下において粒子サイズの減少とともに顕著に低下した。2)反応の低温化・高活性化に対する反応機構の検討Ru/アナターゼ型TiO2触媒の高活性化因子は、第一原理計算によるCO_2メタン化反応過程の解析から検討した。はじめにバルクRu表面での反応過程を調べた。その結果、CO_2メタン化反応過程の素反応と反応障壁に関する知見を得ることができ、全過程の中でRu表面上からのCH_4分子の脱離反応(CH_3+H→CH_4)の反応障壁が最も大きいことがわかった。一方、ナノRu/TiO_2触媒モデルの構造解析では、TiO_2とRuナノ粒子の界面近傍の構造がバルクRuと異なることを見出した。このモデルを用いてバルクRuと同様の反応解析を行った結果、CH_4分子脱離反応の反応障壁が2/3程度の大きさに減少することが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
研究目的:1)CO_2メタネーション触媒の最適化では、反応の低温化に寄与する金属、および触媒担体種の選定や低温化に有効な担持金属サイズに関する知見を得ている。研究目的:2)反応の低温化・高活性化に対する反応機構の検討では、第一原理計算により反応機構の概略と高活性化の要因を明らかにしつつある。以上の結果より、研究課題の目標はほぼ達成されていると考えている。
本研究で得られた知見を基に、その他のCO_2水素化反応(例えばCO_2からのメタノール合成)の低温化を検討していく。一方、水素化反応で使用される水素は、現在、天然ガスや液体炭化水素(例えばメタノール)を用いた水蒸気改質反応により主に製造されている。しかし、現状の水蒸気改質反応は200℃以上の高温が必要で、水素化反応によるCO_2排出量の削減と水素製造時の新たなCO_2排出の間のトレードオフが大きい。つまり、水蒸気改質反応の低温化もCO_2排出量の削減の課題の一つであり、将来的な「水素エネルギー社会」の実現に向けたキーポイントと言える。そこで多角バレルスパッタリング法を用いた水蒸気改質反応の低温化も新たに検討する。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Annual Report of Hydrogen Isotope Research Center, University of Toyama, Japan
巻: VOL.31 ページ: 1-5