研究概要 |
環状AFGP合成ルートの最適化について検討した。まず、電磁波照射下、コア1型またはTn型糖鎖を有するAFGP2回繰り返し単位(6アミノ酸、ATAATAまたはTAATAA)を固相合成した。この糖ペプチドの環化条件の探索を行い、2,2,2-トリフルオロエタノールとジクロロメタンの混合系(TFE-DCM)でジイソプロピルカルボジイミドと1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾールを組み合わせた縮合系(DIC-HOAt)を用いることにより従来のDPPAを用いた環化系よりも単純な生成物ピークパターンが得られた。生成物の詳細な解析を行った結果、従来のDPPAを用いた縮合系ではC末端のエピメリ化が生じ、さらに環化のサイズ選択性も低いため、多様なサイズの環化体のエピマーセットが生成し、目的環状糖ペプチドの収量および精製効率を著しく低下させていることが判明した。一方、TFE-DCM中でDIC-HOAtを用いた縮合系は糖ペプチドの0.1mM溶液中では目的糖ペプチドをサイズ選択的に与え、さらに、エピメリ化が検出感度以下に抑制された。さらに、事前にC末端にD-アラニンを配置した糖ペプチドを調製し、これを同じ条件で環化させることにより目的環状糖ペプチドのエピマーを選択的に得ることに成功した。DPPAを用いた反応系でエピマーが生じていることはこの合成エピマーとDPPAで合成した副生成物の^1H-NMRスペクトルを比較することにより実証した。続いて、この環状糖ペプチドの新規合成法を用いてNMR解析研究に十分な量のサンプルを調製し、完全帰属を行った。また、環状ペプチド骨格の結晶化に挑戦した結果、質の良い結晶を得ることに成功し、その結晶構造解析を行った。結晶構造解析の結果、環状ペプチドはスレオニンを中間に持つ3ペプチド同士の逆並行βシート様構造を有していることが示された。
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