研究課題/領域番号 |
23350074
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
比能 洋 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 助教 (70333333)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 環状ペプチド / 環化反応 / 水素結合 / 糖ペプチド / 不凍糖タンパク質 / 結晶構造 / NMR |
研究概要 |
不凍糖タンパク質は極地方の魚の体液から見出された2糖3ペプチド単位の繰り返し構造を有しており、凍結から身を守る役割を果たしている。申請者らはこの不凍糖タンパク質の環化体も不凍活性を有していることを見出し、その構造活性相関解明のため、効率的合成法の開発と合成物の結晶構造および水中における配座解析について検討した。昨年度見出した、フッ素化アルコール溶媒を用いたペプチド環化反応によりNMR解析、結晶化の検討に十分な量の環状不凍糖タンパク質を調製することに成功した。さらに、環化の際に活性化するC-末端アミノ酸をD体に置換したものも合成したところ、他の環状ペプチド合成法と同様に環化効率が飛躍的に向上することが確認された。また、このD体置換環状ペプチドのHPLC溶出位置と完全L体型環化体の溶出位置の比較を行った結果、DPPAを用いた環化法では数十%のラセミ化が観察されたことに対し、フッ素化アルコール中の反応ではこのラセミ化が完全に抑制されることが確認された。さらに、合成した環状ペプチドの水溶液中での配座解析を行ったところ、アミノ酸が3対3の関係で逆並行型のβシート様構造を取っていること、完全L型の環化体は非常に安定した配座を有していることに対し、モノD置換型環化体はペプチド骨格の自由度が増大していることが確認された。更に、結晶化についても検討を行ったが、結晶構造の解析に耐えうる大きさの結晶を得ることはできなかった。一方、糖未修飾の裸の環状ペプチドも同時に結晶化の検討を行った結果、良好な結晶の獲得に成功した。その結晶構造を調査した結果、糖修飾体と同様に3対3の関係で逆並行型のβシート様構造を取っているが、糖結合位置であるThr残基の位置が一残基シフトしていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的であった効率的環化法の開発、配座解析に成功した。また、新規環化法が従来ラセミ化が起こりにくいとされたDPPAを用いた環化法に比べ有意にラセミ化を抑制する効果が高いことを見出した。さらにラセミ体と完全L型の環状糖ペプチドの配座の比較解析に成功した。さらに、裸の環状ペプチドの結晶構造の取得にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
環状糖ペプチドと裸の環状ペプチドの配座の違いが起きる原因について解析を進める。特に、NMRにより裸の環状ペプチドの溶液中の配座解析を行い、結晶構造で得られた配座との比較解析を行うと共に、環状糖ペプチドの結晶構造取得についても引き続き検討を行う。これらの結果を比較解析することにより環状不凍糖タンパク質の不凍活性に迫る予定である。また、水素結合制御型の環化反応の条件を応用し、環状ペプチドに対する直接グリコシル化や誘導化反応などについても検討を行う。
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