研究課題/領域番号 |
23350075
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
新井 達郎 筑波大学, 数理物質系, 教授 (50151139)
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キーワード | ケージド化合物 / 光分解 / 重子移動 / 励起状態 / 増感剤 / 生理活性物質 / 三重項状態 |
研究概要 |
ケージド化合物の高性能化研究の一貫として、グルタミン酸を光反応で放出するケージド化合物の創成を目指して研究を行った。まず、光吸収部位としてカルバゾールやアントラセンなどの骨格を有し、それらの部位とメチレン鎖でピリジニウム部位を連結し、さらに、ピリジニウムにグルタミン酸誘導体を置換した化合物を合成した。これらの化合物では、光照射により、芳香環部位からピリジニウム部位に電子移動が起こり、それを引き金にして、分解反応が起こり、グルタミン酸を放出することを目指し、実験を行った。その結果、グルタミン酸の放出は起こるが、極めて効率が低いため、効率の向上を目指して、現在、いくつかの取り組みを行っている。上記の化合物でケージド化合物としての性能が悪いのは、光誘起電子により生成した電子移動ペアーから分解反応によるグルタミン酸放出前に逆電子移動が起こるためと考えられる。従って、逆電子移動を抑制するため、三重項を経由した電子移動系の構築のため光吸収部位をベンゾフェノン誘導体に代えた化合物を合成しつつある。また、光吸収部位と電子捕捉部位をつなぐメチレン鎖の長さを変化させて逆電子移動の速度を遅くして、分解反応の効率を高めるため、それに適した化合物の合成を行っている。.また、異なるタイプの電子移動系ケージド化合物についても、励起エネルギー、酸化還元電位、分子構造などを変化させた新たな化合物の合成と光化学反応性、反応効率の測定などを目指して研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光誘起電子移動反応を活用したケージド化合物の創成研究は、ほとんど行われてきておらず、未知な部分が多い。一方、ケージド化合物を発展させて生体機能に関する化学物質の役割を研究することは、緊急の課題である。本研究では、光誘起電子移動反応を活用したケージド化合物をいくつか合成し、光反応性の研究も行ってきており、問題点の解決に向けて、研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ケージド化合物を発展させて生体機能に関する化学物質の役割を研究する有力な手段を提供するとともにその機能を明らかにするため、光誘起電子移動の高効率化、分解反応o高効率化、関連するケージド化合物の研究の推進などこれまでの研究成果を発展させながら、研究を推進する。
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