細胞表層の糖鎖モデルとして、1分子力学計測法による糖鎖伸長反応を利用して膜タンパク質酵素の反応を1分子レベルで追跡することを目的として、相互作用や酵素反応などの糖鎖機能解析をごく微量のピコグラムレベルで検出する技術を創出し、解析技術開発を目指した。 24年度は昨年度までに確立した力学計測法の妥当性を検討するために、1分子レベルで画像解析をするよう高速AFMによる計測法の開発を目指した。具体的には細胞表層で働く酵素としてその可溶性成分が調製可能なコンドロイチン合成酵素について検討を行った。ヒアルロン酸が1分子レベルで伸長する様子が10秒の時間分解能にて追跡できることを見いだした。しかもその反応速度には多分散性のあることが初めて明らかとなった。 25年度は1分子力学計測法にて糖鎖構造などの物性を分子マッピングするために、キチンの粒子やフィルムを用いて、探針に修飾したキチン結合タンパク質ならびにキチナ加水分解酵素を用いて、基板を掃引することで、基板の高さ、弾性率、修飾タンパク質の引力情報を同時に取得して、基板の性質を明らかにすることに成功した。 また、キチン分解酵素の反応性の詳細を調べるために力学計測を系統的に実施することで、キチンとの親和性をnm単位の精度で明らかにし、さらに高速AFMにより、キチンバンドルへの結合挙動ならびに分解挙動をタンパク質1分子レベルの計測にて観察することに成功した。特にキチンにエンド型に作用する酵素ChiCに関しては定量評価をすることも実現出来た。
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