研究課題/領域番号 |
23350079
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
藤本 健造 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (90293894)
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研究分担者 |
塚原 俊文 北陸先端科学技術大学院大学, ナノマテリアルテクノロジーセンター, 教授 (60207339)
坂本 隆 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (80423078)
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キーワード | RNA / 光編集 |
研究概要 |
光による核酸塩基変換技術は、生細胞内遺伝暗号の人為的な改変の可能性を秘めたユニークな技術である。しかし生理的条件下ではほとんど反応が進まず加熱処理(90℃)が必須であるため、細胞内応用は困難である。本研究では、生理条件での塩基変換を実現するため、「核酸塩基変換活性の高い新規光反応性オリゴDNAの開発」および、光による局所加熱が可能な「フォトサーマル(PT)効果の利用」を検討する。23年度は、新規光反応性オリゴDNAの開発に先立ち、種々の添加物存在下での塩基変換反応の加速効果を調べ、開発指針を得ることとした。標的DNAに光反応性オリゴDNAを光クロスリンクさせ、エチレングリコール、PEG(分子量200、1000、8000)、トリエチルアミン、ジアミン類(エチレンジアミン、ジアミノブタン、ジアミノオクタン、スペルミジン、スペルミン)をそれぞれ添加した。37℃で一定時間インキュベート後、標的シトシンのウリジンへの塩基変換反応をUPLCにより解析した結果、ジアミン類(エチレンジアミンを除く)の添加による10倍以上の反応加速が確認された。各ジアミンのpKaと反応液のpHから、これらのジアミン類がDNAとのイオン結合により標的シトシンに近接し、塩基として働くことで反応を加速している可能性が強く示唆された。この知見を基に、従来の光反応性オリゴDNAの光反応点近傍にジアミンを組込んだ、新規な光反応性オリゴDNAを開発中である。一方、PT効果利用のため、光反応性オリゴDNAと金ナノ粒子(AuNP,直径15nm)との複合化を行い、AuNP上での光反応の基礎的検討を行った。結果、AuNP上でも標的RNAとの光架橋、光解裂および塩基変換(90℃加熱)が可能であることが確認された。以上から、適切な光照射によりPT効果を誘起できれば、緩和な条件でRNA塩基編集が可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジアミン添加によって、37℃におけるDNA塩基変換の反応速度が顕著に加速することを見出した。このことは光反応性オリゴDNAにジアミンを組込むことで塩基変換活性を増強できる可能性を強く示唆するもので、研究計画に新たな指針を与えた。また、フォトサーマル効果の利用に必要な金ナノ粒子との複合化に関しても、光反応性DNAの金ナノ粒子への固定、金ナノ粒子表面での光反応、加熱による塩基変換反応の評価を終えており、細胞内応用に向けた大きな課題をクリアしつつある。以上から全体としておおむね順調に進展していると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究成果から、ジアミン類存在下において、光によるDNA塩基編集反応が促進されることが明らかとなった。このことはジアミンを編集標的塩基の近傍に配置することで、塩基編集反応が加速する可能性を強く示唆している。そこで、今後、ジアミンを組込んだ新規光反応性オリゴDNAの設計・合成を行い、塩基編集反応の加速効果を検証する。また、金ナノ粒子表面での光反応、加熱による塩基編集反応の基礎検討を終えたことから、今後、フォトサーマル効果による塩基編集反応の加速効果について、種々の光源を用いて検討する。
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