研究課題/領域番号 |
23350079
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
藤本 健造 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (90293894)
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研究分担者 |
塚原 俊文 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 教授 (60207339)
坂本 隆 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (80423078)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 遺伝子変換 / 酵素不要 |
研究概要 |
申請者が開発した光可逆的核酸類操作法を基盤としたシトシンからウラシルへのピンポイント変異反応には90度で2時間以上加熱する脱アミノ化過程が存在するため、実際に細胞内での操作を考えると実用的に困難であった。そこで、本課題ではこの脱アミノ化をより緩和な生理的条件下で進行させるため、1)金属ナノ粒子を用いることによるフォトサーマル効果を利用する、2)デアミナーゼ酵素内の反応機構を化学的に組み込ませる、これら2点を組み込んだ新しい分子システム系を設計・創製しようと考えている。生理的条件下で、全て光操作のみで細胞内RNA 上のシトシンからウラシルへのピンポイント変異を制御する今までにない分子システムの開発を目指すものである。本年度はDNA構造のB-Z型遷移の際に用いられるアミンであるspermidineを添加することで脱アミノ化がより緩和な条件で進行するのではと考えた。Spermidine存在下、CNVK含有オリゴDNAと相補鎖DNAの光架橋体を37℃条件下、核酸塩基変換反応を解析したところ脱アミノ化の加速が観察された。そこで、同様の実験を様々なアミンを用いて行ったところ1,8-diaminooctane、1,4-diaminobutane、spermineにおいてspermidine以上の脱アミノ化反応の加速を確認した。いずれの場合もアミン添加による脱アミノ化速度は非添加時と比較し約20倍加速していた。以上より、アミン添加による脱アミノ化の促進が生理条件下で可能であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は外部刺激(フォトサーマル効果)による居所的発熱効果による脱アミノ化促進を考えていた。一方で局所的に発熱することは細胞内において各種副反応も考えられることもあり、本年度は1,8-diaminooctane、1,4-diaminobutane、spermineといったジアミン類を添加した系で脱アミノ化反応を解析したところ、20倍以上の脱アミノ化反応が促進できることを見いだした。これにより簡便かつ特殊な操作を必要としない合理的な遺伝子変換(シトシンからウラシル)方法の開発に成功したと位置づけられる。よって当初の計画以上に大きく進展できたと考えている。この研究成果は既に本年度内に論文に速報として報告しており、今後人工核酸を用いた遺伝子修復に関する研究分野において国内外より引用されうる知見だと自負している。
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今後の研究の推進方策 |
ジアミンの添加によりシトシンからウラシルへの変換速度が20倍以上も加速することを見出した。今後はこのジアミン添加による加速効果の分子メカニズムを明らかにし、そこで得られた要素を分子設計に反映させる必要があると考えている。具体的には光架橋分子の近傍にジアミン類をあらかじめ核酸に埋め込んださらに機能化された人工核酸を設計、合成しようと考えている。本研究題目に関する残りの研究期間の中で、この人工核酸を実際の細胞系で応用することで、細胞内における脱アミノ化反応を評価する予定である。また、金属への光応答性核酸の固定化も既に成功しているので、外部刺激(フォトサーマル効果)による脱アミノ化反応についても実験をしていく予定である。
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