研究課題/領域番号 |
23350082
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
斎藤 烈 日本大学, 工学部, 研究員 (20026082)
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研究分担者 |
齋藤 義雄 日本大学, 工学部, 准教授 (40385985)
庄司 真紀子 日本大学, 工学部, 研究員 (90397703)
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キーワード | 蛍光分子 / ナノバイオ / 環境応答分子 / 遺伝子診断 / DNAチップ |
研究概要 |
本研究では、環境に感応しその蛍光強度、波長が劇的に変わる画期的な環境感応型蛍光核酸塩基を開発し、この環境感応型蛍光核酸塩基をDNAやRNAに導入することで核酸の局所構造、塩基配列の違い、蛋白との結合状態の有無を蛍光の強度と波長でモニターするシステムを開発することを目的としている。我々は独自のコンセプトに基づき、天然の核酸塩基に二重結合ならびに三重結合を介して置換芳香族化合物を連結した一群の蛍光核酸塩基を合成した。このなかで、芳香環に電子吸引基が置換した化合物は、溶媒の極性により劇的に蛍光強度が変化する事を見いだした。すなわち、極性溶媒ではほとんど蛍光を出さないが、無極性溶媒では強い蛍光を発することが判明した。これらの蛍光核酸塩基をDNAオリゴマーに導入して相補鎖とハイブリさせて蛍光を測定すると、一本鎖やフルマッチの時には全く蛍光を発しないが、バルジ構造の時にのみ強い蛍光を発することがわかった。 さらに、多くの候補となる修飾蛍光核酸塩基の中から、ミクロ環境に特異的に感応して蛍光が大きく変化する核酸塩基をセレクトすることができた。遺伝子の検出の目的だけでなく広く遺伝子工学のさまざまな分野、例えば細胞内での分子イメージングにも使えるような構造認識機能をもつ蛍光核酸塩基をデザインする研究も現在進行中である。 さらに、何故ドナー・アクセプター型に置換したものだけが、溶媒極性依存型の蛍光発光をするのかを、物理光化学的研究により追求した。同時に、これらの全ての蛍光核酸塩基について分子軌道計算を行い、置換基の効果を解明し、次の分子設計に活用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミクロ環境に感応する蛍光性核酸塩基を十数種類開発する事に成功しており、なおかつそのデザインコンセプトも理論計算も含めて完成しつつあり、研究の達成度は70パーセント以上である。
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今後の研究の推進方策 |
ミクロ環境に感応する蛍光性核酸塩基の開発に既に成功しているので、今後はこれらをどの様なオリゴマーに組み入れ、どの様な機能を持つ蛍光プローブをデザインするかが今後の課題である。我々は、既に一本鎖モレキュラービーコンを開発できる事を確認している。生体内でたんぱく質との相互作用をモニターできる画期的な核酸蛍光プローブの開発が本研究の最終目的である。
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