研究課題/領域番号 |
23350084
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設) |
研究代表者 |
青野 重利 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (60183729)
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研究期間 (年度) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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キーワード | ヘムタンパク質 / センサータンパク質 / 走化性制御系 / シグナルトランスデューサー |
研究概要 |
本研究では、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)中に含まれる走化性シグナルトランスデューサータンパク質Aer2が、ヘム含有PASドメインを有する新規な酸素センサータンパク質であることを見出した。本研究では、poly HAMPドメイン、PASドメイン、di HAMPドメインからなるHPH-Aer2、およびPASドメイン、di HAMPドメインからなるPH-Aer2の結晶構造解析を試み、HPH-Aer2については分解能3.2 オングストロームで、PH-Aer2については分解能2.4 オングストロームで構造決定を行った。HPH-Aer2、PH-Aer2いずれの場合も、KCN存在下において酸化型Aer2を用いて結晶化を行った。 本研究で構造決定したPH-Aer2においては、173~306残基目までの領域は、はっきりとした電子密度が観測されたものの、307残基目以降(di HAMPドメイン)は明瞭な電子密度が観測されなかった。PH-Aer2中のPASドメインにおいてはα3ヘリックス上流に存在する310ヘリックス上にヘム軸配位子として機能するHis234が存在していることが分かった。ヘム鉄上には、CN-に帰属される電子密度が観測されたことから、本研究で得られた構造は、シアン結合型PH-Aer2の構造であると考えられる。 ヘムに結合したCN-の窒素原子と、ヘム遠位側ポケットに存在するTrp283側鎖中の窒素原子間の距離は3.0オングストロームであることから、ヘムに結合したCN-とTrp283側鎖間で水素結合が形成されているものと推定される。現時点では、酸素結合型Aer2の構造は得られてはいないが、酸素結合型Aer2においてもシアン結合型の場合と同様、ヘムに結合した酸素分子とTrp283間で水素結合が形成されるものと推定される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、新規な酸素センサータンパク質として、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来の走化性シグナルトランスデューサータンパク質Aer2を見出すことに成功している。前年度までの研究においては、紫外・可視吸収スペクトル、共鳴ラマンスペクトル等の分光学的測定を行い、Aer2中で酸素センサー本体として機能するヘムおよびヘム周辺の局所構造に関して、詳細な情報を得ることに成功している。また、Aer2の構造機能相関解明のために必須の構造情報を得るため、Aer2のX線結晶構造解析にも取組み、その結晶構造決定にも成功した。これまでに得られた分光学的測定結果と、X線結晶構造解析の結果を総合することにより、新規酸素センサータンパク質Aer2の構造機能相関解明のために必要な情報を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、緑膿菌由来の新規な酸素センサータンパク質Aer2を見出し、その結晶構造解析に成功している。しかしながら、現状で構造解析に成功しているのは、Aer2タンパク質のC末領域に存在するシグナリングドメインを削除した変異体についてのみである。Aer2による酸素センシング、ならびにシグナル伝達の全貌を明らかにするためには、全長型Aer2タンパク質の構造情報が必須であると考えられる。また、生理的なシグナル分子である酸素を結合した状態(オキシ型)での構造も同様に必須である。そこで今後の研究においては、オキシ型Aer2の結晶構造解明に重点をおいて研究を遂行する。全長型タンパク質を用いて、オキシ型Aer2の結晶化を試みる。
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