研究課題
クラウンエーテルに基づく超分子ローター構造を利用することで、強誘電性を基礎とした新規機能開拓ならびに複合機能開拓を行い、分子回転に基づく強誘電体の基盤を確立することを目的に、以下の項目について検討を行っている。材料開拓:1.分子のfilp-flop運動に基づく強誘電性発現・2.ケージ内分子回転に基づく強誘電性発現の探索・3.球状分子の回転に基づく強誘電性発現機能開拓:4.回転ポテンシャル設計による分極軸の複数化・5.複合回転系による分極軸の自在制御・6.回転子への機能付与と複合機能化平成24年度までの研究において、1~3の項目について当初の予定通りの成果を得た。まず、項目2においてはピラジン系ローターを用いることにより強誘電性発現の可能性を見出した。複素環化合物であるピラジンはプロトン化することでアンモニウム基を持たないにもかかわらず、[18]crown-6誘導体と水素結合を介して超分子構造を形成し、結晶中へ導入することが可能であった。結晶中での分子運動に伴う大きな誘電応答を観測することができた。また、項目3についてはフルオロアダマンタンアンモニウムを用いて有望な系を見出した。C3対称軸を持つアダマンタンアンモニウムは結晶内でスムーズに回転子、その回転はフッ素基を導入することでもある程度保たれた。回転のポテンシャルは複雑な形を与えた。3種類の[18]crown-6誘導体と複合化させることで、種々の結晶を合成し、その誘電応答を評価することで、有望な材料系であることを確認した。さらに項目1では分子回転に伴うdipoleのflip-flopを利用した強誘電体について精査し、当初の目標のみならず、特に、混晶系において興味深い結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度までの研究において、1~3の項目について当初の予定通りの成果を得た。項目2においてはピラジン系ローターを用いることにより強誘電性発現の可能性をみいだした。また、項目3についてはフルオロアダマンタンアンモニウムを用いて有望な系を見出した。本年度はこれらの結果を論文にまとめる。さらに項目1では分子回転に伴うdipoleのflip-flopを利用した強誘電体について精査し、当初の目標のみならず、さらに興味深い結果が得られている。
項目1~3を引き続き推進する。特に項目1について当初の予定にはない興味深い結果が混晶系において得られているので、その系についても検討を進める。項目4,5のについては、かなり研究は困難であることが判明しつつある。しかしながら、分子設計を改めて行い、複合回転系においては分極軸の制御に向けて有望な系を見出しつつある。具体的には、これまで回転子のみの設計でとどまっていたところ、クラウンエーテル誘導体にも可動なダイポール系を導入できる可能性があることが分かり、この系について精査することで、本研究の終了後に繋がる成果を得ることを目標とする。すでに、有望な分子系をいくつかピックアップしており、それを手始めとして、結晶構造を分子設計にフィードバックすることで、複合回転系の実現を目指す。6については引き続き分子設計を行い、新たな系の構築を模索する。
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