研究概要 |
(m-fluoroanilinium)(dibenzo[18]crown-6)[Ni(dmit)2]において実現している、分子回転に伴うdipoleのflip-flopを利用した強誘電性の発現について、アリールアンモニウムおよびcrown-ether部分を変えて系統的に検討した。 C2回転軸をもつベンゼン環の誘導体については、誘電物性に与える置換基効果を検討するため、敢えて、フッ素より大きなハロゲン元素を導入した、(m-X-anilinium)(dibenzo[18]crown-6)[Ni(dmit)2] (X = Cl, Br, I)を合成し、その構造と物性を明らかにした。 C3軸をもつアダマンタン誘導体として、3-fluoroadamantylammonium (FADNH3+)と[18]crown-6からなる超分子ローター構造を 導入したところ、室温付近で明らかに分子回転が生じていることが分かった。その結果、c軸方向に周波数依存性とともに大きな誘電応答が得られ、アダマンタン誘導体の有用性が示された。 また、NH3をアンカーとしてクラウンエーテルの空孔に水素結合で固定し、C-N軸周りの分子回転を利用したdipoleの反転行うのでは無く、特定の回転軸をもたずに、ケージ状の超分子構造の中である程度自由な回転を発現する系として、水素結合部位をもち、かつ対称性が高いピリダジニウムを導入した。水素結合により弱く固定された分子の向きを外部場により変化させることで、大きな誘電応答が得られた。 さらに、回転子に複数のプロトン受容部位を持つ4-aminopyridiniumカチオンを導入し、水素結合におけるプロトン移動に基づく誘電応答を評価した。複数の誘電応答機構をもつ結晶の構築に向けた足がかりが得られた。
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