研究課題
「電子ペーパー」はデジタルペーパーとも呼ばれ、書き換え可能で紙がもつ手軽さ、柔軟性、薄さ、高視認性、そしてメモリー性などの機能を有する次世代の反射型ディスプレイである。この表示素子においてその表示を担う最も重要なKeyマテリアルは、無極性媒体中に存在(分散)した微粒子(電子インク)である。しかしながら、これまで電子ペーパーに用いられる微粒子の設計および基礎物性に関する研究は皆無である。本研究では、高精細な電子ペーパーのフルカラー化を達成するために、無極性媒体中で白、イエロー、マゼンタ、シアン色を有する単分散かつ高性能な着色高分子電子インクの設計・合成およびそのような液体中において微粒子の帯電制御に関する基礎的かつ根本的理解を得ることを目的とした。本年度は以下の研究成果を得た。1. メタクリル酸メチル(MMA)を主モノマーとして用い、アクリロニトリルをコモノマーとして用いることによって単分散な微粒子を収率高く合成できる条件が見いだされた。マクロモノマー濃度を変化させることによって微粒子径を設計できること、重合性の機能染料を用いることによって、単分散かつサブミクロンサイズのY, M,Cのカラー微粒子の精密に合成できる条件を見出した。2. TiO2微粒子やZrO2微粒子などの無機微粒子とポリ(2-ビニルナフタレン)との複合化について、無機微粒子のカプセル化とポスト重合法の2種類の方法について検討を行い、高屈折率な白色微粒子の合成方法する条件を見出した。3. RAFT重合法を用いて帯電性基を有する機能性マクロモノマーの合成技術の開発を行った。また、このマクロモノマーを用いた分散重合によって、電気泳動性の高いカラー微粒子が合成できることを見出した。4.櫛歯電極を用いた微粒子の電気泳動特性評価に関する評価技術の確立を行った。
2: おおむね順調に進展している
申請課題の目的達成のためには、①カラー微粒子の精密合成技術の確立、②高性能白色微粒子の合成法の確立、③帯電制御技術の確立、④電気泳動評価技術の確立にある。このうち、①については重合法の詳細な検討によって微粒子設計の基礎的知見を明らかにし、完成している。②については、TiO2やZrO2などと高分子とのハイブリッド化技術によって、その方法論を確立するに至っている。③についてはRAFT重合法と末端基変換法を用いて帯電性基を有する機能性マクロモノマーの合成法を確立した。また用いたマクロモノマーを用いて微粒子合成を行うと微粒子表面や分散剤の末端に帯電性基を有する機能性の帯電性微粒子が得られることが見出されてきている。また、微粒子径制御およびどのような官能基を微粒子のどこに導入したらよいのかについても基礎的な知見が明らかになりつつある。また、④の電気泳動特性評価については、櫛歯電極を用いた直接観察の方法を用いることによって、より精密に帯電性を評価することができるようになった。これらの知見をもとに、最終年度ではこれらをさらに詳細に検討することによって、研究期間内にすべての目的が達成できると考えられる。
白色微粒子およびカラー微粒子の合成技術はほほ完成している。また、官能基を有するマクロモノマーの合成法もほほ確立するに至っている。今後の推進方策としてこれらの知見を活かして、様々な帯電性基を微粒子のどこに導入したらどのような電気泳動性を示すのかを明らかにする。そのために、電気泳動評価技術の確立と、様々なカラー微粒子を合成し、総合的な評価を行った後、カラー電子ペーパーのプロトタイプの作成を目指す。
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