研究概要 |
フロンティア軌道エネルギーおよび分子間相互作用を考慮して、ヘテロ環化合物を基本骨格としたπ拡張電子系を設計・合成して高性能の薄膜トランジスタを開発した。分子構造ならびに分子間相互作用は、単結晶X線晶構造解析で解明し、薄膜構造はX線回折ならびにAFM測定で明らかにした。嵩高い置換基なしでも安定に存在する化合物としてジアザボロールに注目し、種々の誘導体を合成して構造と物性の関係を調べた。電子受容性を高めるためにキノン骨格を導入するとn型トランジスタ特性を示した。こうした分子では、対称分子だけではなく、一つのジアザボロール環からなる非対称分子も良好なn型特性を示すことを見つけた。例えば、ナフトキノン誘導体およびチアジアゾール類縁体は0.04cm^2/Vsの良好な電子移動度を示した。また、3,6-ジアリールチエノ[3,2-b]チオフェン-2,5-ジオン誘導体を合成し、n型半導体特性を調べた。アリール基としてトリフルオロメチルフェニル基の導入が、電子受容性の増大ならびに結晶性をよくすること、分子を基板上に配列することに有効であった。カルボニル基をジシアノメチレン基に変換した分子は、電子受容性が高くなり,そのFETデバイスは大気安定性を示した。ジケトピロロピロールは平面性の高い分子で、NH体では水素結合によりリボン状のネットワークを形成する。トリフルオロメチルフェニル基を導入した誘導体はn型のFET特性を示し,移動度は0.029cm^2/Vsと良好であった。さらに、ジインデノピラジン環に末端置換基として長鎖アルキル基やtブチル基を導入して溶媒に可溶な半導体を開発し、溶液法でFETデバイスを作製した。これらの新規に開発したn型半導体を薄膜有機太陽電池に応用し、フラーレンに替わるn型半導体の探索をすすめた。
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