研究課題/領域番号 |
23350089
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
宮武 健治 山梨大学, クリーンエネルギー研究センター, 教授 (50277761)
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キーワード | 燃料電池 / アニオン伝導 / 高分子電解質 / ブロック共重合体 |
研究概要 |
本年度は芳香族高分子にアンモニオ基を導入したアニオン交換膜において、ブロック共重合化の効果を検討した。芳香族ポリエーテルブロック共重合体は、求核置換重縮合により重合した。得られたポリマーのクロロメチル化反応を行い、溶液キャスト法により製膜を行った。この前駆体高分子膜をトリメチルアミン水溶液に浸漬させることで四級アンモニオ化し、続いて1Mの水酸化ナトリウム水溶液を用いたイオン交換により、OH^-型の淡黄色透明の強靭な膜として得た。水中におけるアニオン導電率、含水率、モルフォロジー、化学的安定性などの評価を行った。芳香族ポリエーテルブロック共重合体は、疎水性ブロックの長さ(X)と親水性ブロックの長さ(Y)を調節して合成を行った。全てのブロック共重合体は高分子量体(重量平均分子量は90kDa以上)であり、強靭で柔軟な膜を得た。クロロメチル化反応時間を変化させることでクロロメチル基の導入率を制御し、四級アンモニオ化反応により様々なイオン交換容量(IEC=0.4~1.9mequiv/g)を有する電解質膜(QPE)を作製した。透過型電子顕微鏡観察から、ランダム共重合体膜(rQPE)に比べてミクロ相分離構造が発達していることが確認できた。QPE膜の水中におけるイオン導電率の温度依存性を測定したところ、QPE膜はrQPE膜に比べてIECが低いにもかかわらず、高いアニオン導電率を示した。例えば、IECが1.44mequiv/gのQPE膜は、80℃において77mS/cmという高いヒドロキシイオン導電率を示した。QPE膜の化学的安定性(10wt%-HH、1M-KOH、燃料:5wt%-HH+1M-KOH)を試験したところ、いずれの試験でも500h経過後も膜形状に大きな変化は認められず、優れた安定性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
芳香族ポリエーテル高分子の分子構造を検討した結果、アニオン導電性と化学安定性を両立できるブロック共重合体を見出した。これにより、高分子電解質膜のヒドロキシイオン導電率としては非常に高い値を達成し、500時間の安定性も確認した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、前年度に見出したブロック型芳香族ポリエーテル高分子電解質を中心に、その構造の最適化を進める。具体的には、高分子電解質としての基礎物性(分子量、耐熱性、結晶化度、イオン部分と結晶性部分の相分離構造)に加え、アルカリ形燃料電池用電解質膜として満たすべき特性(アニオン導電率、熱水・強アルカリ耐性、機械強度、気体・液体の溶解度と拡散速度)を測定する。嵩高く非晶性な親水性ブロック、直線型で結晶性な疎水性ブロック、電荷非局在型のオニウム塩、の効果を独立に検討し、各物性を掌る構造規制因子を明らかにする。これら複合させて、高性能アルカリ形燃料電池に適したアニオン交換膜の分子構造を明らかにする。
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