全固体蓄電デバイスは安全性に優れた蓄電システムであるため、定置用電源や電気自動車用電源として期待されている。特に軽量でエネルギー密度の高い全固体リチウムイオン電池は国内外を問わず産官学の研究機関で研究に鎬が削られている。しかし、全固体リチウムイオン電池では電極と電解質の接触が固体/固体接合となるため、その界面をイオンが移動するときに大きな抵抗が生じるなど、実用化にはまだ多くの課題が残る。そこで、本研究では固体/固体接合界面にイオン液体を入れ、電池活物質/イオン液体/固体電解質相を構築し、電極と電解質間のイオン移動反応を促進することを目的とする。そのために、本研究ではイオン液体/活物質間、イオン液体/固体電解質のナノ界面間でのイオン移動反応に関する速度論的知見を得る。本年度は、チタン酸リチウム電極とイオン液体間でのイオン移動に焦点を当て、そのイオン移動に伴う活性化障壁を様々なイオン液体で調べた。チタン酸リチウムの薄膜電極をゾルゲル法により作製し、粘結剤や導電助剤フリーの電極により、界面でのイオン移動反応を調べた。その結果、活性化エネルギーはカチオンとアニオンの種類に依らず、ほぼ70kJ/molの値を示した。また、コバルト酸リチウムについても同様にゾルゲル法により作製し、同じイオン液体を用いて、活性化エネルギーを検討した。コバルト酸リチウムでは、活性化障壁が15kJ/mol以上低減することが分かった。この要因としては、イオン液体中でリチウムイオンがアニオンとクラスターを形成し、そのクラスターからリチウムイオンが抜け出す過程が両電極で異なると考えている。
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