研究課題/領域番号 |
23350090
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
安部 武志 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80291988)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 擬固体 / リチウムイオン電池 / イオン移動 / イオン液体 |
研究概要 |
全固体蓄電デバイスは安全性に優れた蓄電システムであるため、定置用電源や電気自動車用電源として期待されている。特に軽量でエネルギー密度の高い全固体リチウムイオン電池は国内外を問わず産官学の研究機関で研究に鎬が削られている。しかし、全固体リチウムイオン電池では電極と電解質の接触が固体/固体接合となるため、その界面をイオンが移動するときに大きな抵抗が生じるなど、実用化にはまだ多くの課題が残る。そこで、本研究では固体/固体接合界面にイオン液体を入れ、電池活物質/イオン液体/固体電解質相を構築し、電極と電解質間のイオン移動反応を促進することを目的とする。昨年度はイオン液体とコバルト酸リチウム、および、イオン液体とチタン酸リチウムについて、それぞれリチウムイオンの移動に伴う活性化障壁を得た。コバルト酸リチウムではチタン酸リチウムよりも15kJ mol-1活性化障壁が小さいことを見出し、また、この要因として、イオン液体中ではリチウムイオンがアニオンに囲まれて存在するためであると推測した。この要因をさらに詳細に調べるために、平成24年度ではリチウムイオン伝導性固体電解質とイオン液体間のリチウムイオン移動を四電極式セルで詳細に調べ、レッドクス反応の伴わないモデル系での検討を行った。固体電解質には、リチウムイオン伝導性リチウムランタンチタン酸化物を用いた。その結果、リチウムイオンの移動に伴う活性化エネルギーは高く、チタン酸リチウムとほぼ同程度であることが分かった。これらの結果から、活物質とイオン液体界面での活性化障壁はリチウムイオンのイオン液体中での存在状態に依存し、また、電位にも強く依存することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
擬全固体電池の構築のための基礎研究として、イオン液体と活物質界面でのリチウムイオン移動に伴う活性化エネルギーを調べ、正極材料とイオン液体間の活性化障壁は小さく、負極材料であるリチウム含有酸化物とのイオン液体間では活性化障壁が大きいことを見出した。これらの結果は、正極材料中では擬固体化が有効であることを示すものであり、擬固体電池構築のための有用な成果であると考えている。擬固体電池の基礎研究としては、まだ負極の検討、および、固体電解質とイオン液体間での活性化障壁も検討する必要があり、達成度としては40%程度であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果で酸化物負極とイオン液体界面での活性化障壁が大きいことが分かったので、今後の研究の方向としては、負極については、黒鉛系炭素材料を検討し、また、リチウム金属についても検討することを考えている。さらに、固体電解質としては、耐還元性の高い固体電解質を用い、これとイオン液体界面での活性化障壁を調べ、最終的にどのような擬固体電池を構築すれば良いかの設計指針を与える。
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