研究課題/領域番号 |
23350092
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
機能材料・デバイス
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
藤井 達生 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (10222259)
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研究分担者 |
市川 和典 神戸市立工業高等専門学校, 電気工学科, 講師 (90509936)
高田 潤 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 教授 (60093259)
中西 真 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 助教 (10284085)
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キーワード | イルメナイト / エピタキシャル薄膜 / 酸化物磁性半導体 / 異方性 / ヘマタイト / ホール効果 / 微細加工 |
研究概要 |
本研究では、まず、サファイア単結品基板上に(11O)配向すなわち結晶のc軸が膜面内に配向したエピタキシャル固溶体薄膜を幅広い組成範囲で作製することを試み、次に、得られた(110)配向膜の磁気的、電気的性質が固溶体組成によってどのように変化するのかについて検討した。また、得られた薄膜のデバイス化への展開を見据えて、フォトリソグラフィー法による薄膜の微細加工を試み、基板上に薄膜を20×100μm矩形状に切り出し、15°間隔で同心円状に配置した試料を作製した。 XRD構造解析の結果、得られた薄膜はx=0.5~0.9の幅広い組成範囲で、薄膜の成長方向および面内方向の方位関係が、サファイア基板単結晶のものと完全に一致しており、非常に結晶性に優れたエピタキシャル薄膜であった。くわえて、すべての固溶体薄膜は低温で大きなフェリ磁性を示すことが確認され、x≦0.7の組成範囲では室温でも磁化を示したことから、空間群R3の秩序相が生成したと言える。また、固溶体薄膜は膜面内で[110]方向が容易軸、[001]方向が困難軸となる非常に大きな磁気異方性を示すことも確認できた。さらに薄膜のホール効果測定を行なった結果、組成x<0.73の薄膜は負のホール係数を持ち、キャリアはn型であったのに対し、x>0.73の薄膜のキャリアはP型であり、いずれも半導体的な電気伝導挙動を示した。また、同心円状に配置した微細加工後の試料の電気伝導性を測定したところ、[110]方向の電気伝導性が、[001]方向の電気伝導性に比べて3倍ほど高く、(110)面内の電気伝導性は、方向による異方性を示すことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘマタイト・イルメナイト固溶体薄膜を幅広い組成範囲で再現性良く成膜できる成膜条件を確立することができ、また、そのデバイス化に向けて必要となる薄膜のフォトリソグラフィー条件、エッチング条件も見出すことができたため、上記のように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ヘマタイト・イルメナイト固溶体薄膜の新たな機能性の探索として、光が関与する物性、例えば光誘起磁性や光誘起伝導性などの評価を行う。また、半導体デバイスとしての第一歩となるpn接合素子の試作ならびに特性評価を行い、外部磁界が薄膜の半導体特性に及ぼす影響を検証し、磁性半導体としての可能性を検討する。
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