研究課題/領域番号 |
23350096
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
横山 泰 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (60134897)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | フォトクロミズム / ジアステレオ選択性 / エナンチオ選択性 / ジアリールエテン / 水素結合 / ヒト血清アルブミン / DNA |
研究概要 |
これまでのジアステレオ選択的フォトクロミック反応において分子内水素結合を一つ持たせた化合物においては、置換基を嵩高くすることで、環化量子収率0.85、環化のジアステレオ選択性100%、環化収率98%を達成していた。今年度、水素結合を二つもたせられる化合物を合成したところ、環化量子収率0.95、環化収率99%を達成した。興味あることに、水素結合を強固に作るヒドロキシ基がanti型の構造より、片方の水素結合が弱くなるsyn型の方が良い性質を示した。これは、光環化する際に水素結合が切れて反応するか、切れずに反応するか、という違いがあってanti型の方がよりエネルギーを必要とするためではないかと推察している。 平成25年度に、平成23-24年度の成果である、ヒト血清アルブミン(HSA)に取り込まれたビスチエニルエテンが室温で63%ee、-4度で71%eeを示すことを論文発表した。平成25年度に、この研究を更に進めた。媒体に第三の物質を少量添加すると、HSAのコンフォメーションに変化が生じることをCDスペクトル測定によって確認した。他のフォトクロミック化合物を用い、媒体に添加する物質の種類と量を変化させて検討したところ、室温で最大94%eeを達成できた。さらに、ビスチエニルエテンの取り込みの際の温度を-4度まで下げると、>99%eeの選択性を達成できた。これは実に画期的な成果である。 エナンチオ選択的フォトクロミズムの研究において、HSAではなくDNAを用いた研究を行った結果、40%程度のエナンチオ選択性を観測した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度当初の研究実施計画に挙げた三つの点、すなわち、(1)複数の水素結合をもつ化合物を合成し、そのジアステレオ選択性を高める、(2)ヒト血清アルブミン中におけるエナンチオ選択的光環化反応において、更に高いエナンチオ選択性を目指す、(3)DNA、コレステリック液晶などのキラル媒体中における高いエナンチオ選択性を追求する、に関して、(1)は予想以上の高い性能を示す化合物を得ることに成功した。(2)について、ほぼ完全なエナンチオ選択性を示す系を構築できた。(3)について、DNAをキラルテンプレートとして用いる、これまでにないコンセプトによる実験を行い、比較的高いエナンチオ選択性を観測した。このように、すべての研究計画において、予想をはるかに上回る良い成果を挙げることができた。特にHSAを用いてほぼ100%eeの選択性を得たことは特筆に値する成果である。従って、区分(1) 当初の計画以上に進展している、と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、以下の事項を行う。 (1)フォトクロミック化合物の種類を変えてジアステレオ選択性を発言できるような系を創出する。 (2)DNAをテンプレートとするエナンチオ選択的反応において、その選択性の向上を図る。 (3)HSAを用いるエナンチオ選択的反応で有意に生成するエナンチオマーの絶対立体配置を明らかにする。 (4)絶対不斉合成を活用したフォトクロミック反応を行う。
|