研究課題/領域番号 |
23350099
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田部 勢津久 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (20222119)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 光伝導度 / 蛍光体 / 光物性 / 希土類 / 電子構造 / セリウム / ガーネット / 5d電子軌道 |
研究概要 |
Ce添加Y3Al5-xGaxO12の組成で一連のガーネット蛍光体を作製,光伝導度測定や光学特性の温度依存性から光イオン化による消光を詳細に調査した.発光(PL)・励起(PLE)スペクトルとその温度依存性をXe白色光源,分光器,クライオスタットを組み合わせた実験系により測定した.光電流励起(PCE)スペクトルは、単色光をクライオスタット内部の試料に照射し,各波長での光電流値を微小電流計で測定した.YAGにおいては,570nmピークの5d1-4f遷移によるPLバンドと340nmと460nmピークの4f-5d2と4f-5d1遷移によるPLEバンドが観測されたが,YGGでは完全に消光し観測されなかった.Ga濃度が増加するにつれて,5d1は短波長シフトし,発光強度は低下した.YAGにおいて,250nm以上の長波長励起では、光電流が観測されなかったが,PL測定において全く発光を示さなかったYGGは,全温度において4f-5d1と4f-5d2に対応する強い光電流励起バンドを示した.これは,Ce3+の5d1と5d2準位の光励起により,伝導帯へ電子移動したことを示している.また,300Kでの光電流強度はGa濃度が増加するにつれて増加し,発光強度と逆の傾向であった.これらの結果は,発光の消光原因が光イオン化であることを示唆している.一方,YAGGは,50K以下で5d1バンドが消滅した.これは,YAGGホスト中では,5d1励起準位は,熱活性化過程を経て,伝導帯へ電子移動していることを示している.つまり,5d1準位は伝導帯の下,5d2準位は伝導帯の中に位置していると考えられる.YGGでは5d1,5d2の両バンドとも伝導帯に埋まっていると考えられる.YGGにおいては,光イオン化過程により,発光が完全に消光し,YAGGにおいては,熱アシスティッド光イオン化過程による消光が起こることが明らかになった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キセノン白色光源と分光器,クライオスタットを組み合わせた,光伝導度の波長温度依存性測定システムが完成した.これにより,5d電子準位を発光励起始準位とするCe3+添加蛍光体の発光,励起スペクトル,光電流励起スペクトルの温度依存性を系統的に組成やバンドギャップを制御した試料に対して測定てきるようになり,データの蓄積が順調に進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
より幅広いガーネット組成結晶中のCe(III)イオンの発光特性と光伝導道測定,同じくEu(II)添加酸化物蛍光体の4f-5d遷移とホストのバンド構造,特に5d電子軌道と伝導帯の相対位置関係に付いて,詳細に検討を行っていく. 昨年度は,時折クライオスタット内部に真空ポンプからの油逆流が認められ,電導度精密測定の障害となったので,新たにターボ分子ポンプを購入し,より良い真空環境で,試料の低温から高温までのスペクトルデータの取得を実現する.
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