研究課題/領域番号 |
23350101
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
馮 旗 香川大学, 工学部, 教授 (80274356)
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研究分担者 |
中西 俊介 香川大学, 工学部, 教授 (30155767)
石川 善恵 香川大学, 工学部, 准教授 (20509129)
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キーワード | 色素増感 / 太陽電池 / 二酸化チタン / 結晶面制御 / ナノ粒子 |
研究概要 |
本研究は、独自開発した新規合成法で特定の結晶面を露:出するTiO_2ナノ粒子を合成し、特定の結晶面における色素吸着特性と色素増感太陽電池特性との関係を解明し、表面制御による太陽電池性能向上を目的とし、H23年度は以下の内容の研究を行った。 三チタン酸(H_2Ti_3O_7)ナノシートからTiO_2ナノ結晶の合成について検討した。三チタン酸を水酸化テトラメチルアモニウム溶液中で水熱処理した後、蒸留水中に分散し、初めて剥離に成功した。剥離した三チタン酸ナノシートを水熱処理して様々な粒子形状のTiO_2ナノ結晶を合成した。TiO_2ナノ結晶のナノ構造解析の結果からロッド状、リーフ状、ひし形、六角形のアナターゼ型TiO_2ナノ粒子は、反応温度と溶液のpH制御によって合成した。リーフ状、ひし形、六角形粒子は(010)結晶面を露出するが、ロッド状粒子は[11-1]方向に垂直する結晶面を露出することがわかった。色素吸着の結果から、(010)面を持つリーフ状粒子は高い色素吸着量を示したことから、(010)面は色素の吸着サイトが多い。一方、ロッド状粒子は色素吸着量が(010)面と比べかなり低いので、ロッド状粒子の結晶表面、すなわち[11-1]方向に垂直な面は色素の吸着サイトが少ないことを明ちかにした。この結果から、TiO_2ナノ粒子の色素吸着挙動に結晶面に依存することが明らかとなった。色素増感太陽電池評価から太陽電池特性は色素吸着特性に強く影響されることを示唆する結果も得られた。出発原料の層状チタン酸ナノシートおよび各条件下で水熱合成したTiO_2ナノ結晶について、透過型電子顕微鏡を用いて、TiO_2ナノ結晶の生成過程におけるナノ構造変化、形状変化を調べ、TiO_2ナノ結晶のナノ構造や形状と出発原料の層状チタン酸ナノシートのナノ構造や形状と相関関係が強い。ダイナミック分光システムを構築して、ポンプープローブ法および四光波混合法でTiO_2-色素ナノ複合体の光励起電子の寿命や緩和過程の測定を行った。色素増感光電反応における電子移動プロセスを分析できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H23年度の研究目標である特定の結晶面TiO_2ナノ粒子合成、結晶面による色素の吸着特性の違いについて、計画通り順調に達成した。さらに次年度の特性評価に必要なダイナミック分光シネテムの構築が完成し、測定可能である結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度の研究結果を踏まえ、三チタン酸ナノシートから合成したTiO_2ナノ結晶の色素吸着特性と色素増感太陽電池特性との相関性を解析する。さらに四チタン酸ナノシートから合成したTiO_2ナノ結晶を合成し、合成したTiO_2ナノ結晶の結晶面とチタン酸ナノシートの結晶構造との相関性を調査する。合成したTiO_2ナノ結晶の色素吸着特性を調べ、結晶面の依存性を明らかにする。さらに前年度に構築したダイナミック分光システムを用いて合成したTiO_2ナノ粒子およびTiO_2-色素ナノ複合体の光学的解析を行う。結晶面、色素吸着特性と電子移動効率やエネルギー変換率との関係を解明する。
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