研究課題/領域番号 |
23350103
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研究機関 | 大阪電気通信大学 |
研究代表者 |
川口 雅之 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (10268295)
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研究分担者 |
榎本 博行 大阪電気通信大学, 工学部, 教授 (10213563)
村松 康司 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50343918)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 層状化合物 / インターカレーション / 1族・2族金属 / エネルギー貯蔵 / 電池 |
研究概要 |
平成24年度はBC2N組成のグラファイト様層状化合物に対してインターカレーションを行い、以下のような研究実績をあげることができた。 1.BC2Nへのナトリウムの電気化学的インターカレーション:代表者の川口と大学院生はBC2N組成の材料を作製し、その材料を電極に用い、電気化学法でナトリウムをその層間にインターカレートおよびデインターカレートさせた。これはナトリウム二次電池負極としての特性評価に相当し、平成24年度はこの電極にバインダーを加えることにより、実際の二次電池の充放電特性に近い形で評価し、可逆的な充放電容量180~190mAh/gと比較的大きな値を得た。バインダーを使わなかった昨年までの結果と比べて70%近く容量が増加し、バインダーの効果が確認できた。 2.BC2Nへのマグネシウムのインターカレーション:昨年に引き続き、川口と大学院生らはBC2Nに気相法でマグネシウムのインターカレーションを行い、分担者の榎本教授と共に作製した層間化合物の電気特性を調べ、層間化合物が元のBC2Nより比抵抗が増大するという結果を得た。一方、川口は作製したBC2Nを持って研究協力者Herold博士(フランスNancy大学)を訪問し、合金法を用いてマグネシウムやカルシウムのインターカレーションを試みた。その結果については、現在、双方で検討中である。 3.電子構造の解明:研究分担者の村松教授がマグネシウムがインターカレートされたBC2N層間化合物について、米国放射光施設ALSにて放射光軟X線吸収分光分析を実施した。川口と協力者の大学院生らはその解析を行い、インターカレートされたマグネシウムがBC2N中の炭素と強く相互作用していることを確認した。 4.成果発表:川口と大学院生は以上の結果について論文発表するとともに、榎本教授、村松教授らと連名で国際会議Carbon2012や国内の会議などで発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究目的は、B/C/N系層状化合物に対する1族および2族金属のインターカレーションを検討し、新しいエネルギー貯蔵材料としての可能性を探索すること、およびB/C/N化合物の電気特性評価および電子状態の評価を行ない、化合物の電子親和力と金属のイオン化エネルギーとの関連からインターカレーション機構の解明を行うことであった。上記のエネルギー貯蔵材料とは、リチウムイオン二次電池に替わる高容量二次電池用の電極材料や、高温で転移する超伝導材料である。 平成24年度までの達成度としては約50%と自己評価している。その理由としては、まずリチウムより資源が豊富なナトリウムを用いる二次電池の負極材料としてBC2N組成の材料が利用できる可能性を見出したことである。ただ、その容量は180~190mAh/gという値で、リチウムイオン二次電池負極として使われているグラファイトよりは大きいものの一般に期待される300mAh/gより現時点では小さい。次に、さらに資源という観点、容量という観点、および安全性という観点から期待されるマグネシウムイオン二次電池の開発の第一歩として、BC2Nに気相法でマグネシウムをインターカレートすることに成功した。これは、グラファイト様層状化合物にマグネシウムがインターカレートさせることに成功した世界初の例である。現時点では電気化学的にマグネシウムをインターカレートさせることに成功しておらず、今後の課題となる。また、研究協力者のHerold教授を訪問し、先方の独自の方法である合金法を用いてマグネシウムやカルシウムのインターカレーションに着手することができた。 以上の成果と今後の課題を考慮して、現時点では達成度としては約50%と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は以下の方針で研究を進めたいと考えている。 1.B/C/N材料とC/N材料の作製、およびナトリウムイオン二次電池用負極材料やナトリウムイオンキャパシタ用電極材料としての応用:代表者の川口と大学院生は引き続きBC2NやC/N材料を作製し、その材料のナトリウムイオン二次電池用負極材料としての特性評価、および新しい試みとしてナトリウムイオンキャパシタ用電極としての特性評価を行う。 2.BC2Nへのマグネシウムおよびカルシウムのインターカレーション:川口と大学院生は引き続き気相法でBC2N組成の材料へのマグネシウムのインターカレーションを行う。分担者の榎本教授、川口および大学院生は、作製した層間化合物の電気特性やホスト-ゲスト間の化学結合について解析を行う。また、川口と研究協力者のHerold教授は合金法を用いてマグネシウムやカルシウムのインターカレーションを行い、作製した層間化合物の結晶構造解析や化学結合の解析を行う。 3.層間化合物の電子状態の解析:川口と大学院生は分担者の村松教授と共に、マグネシウムやカルシウムのインターカレートされたBC2Nの電子状態に関して、X線吸収分光分析を行う。 以上の結果を基に、1族および2族金属がインターカレートされたB/C/N系層状化合物の新しいエネルギー貯蔵材料としての可能性を探索する。
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