研究課題/領域番号 |
23350108
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
米竹 孝一郎 山形大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (30143085)
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研究分担者 |
羽場 修 山形大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (70261328)
香田 智則 山形大学, 大学院・理工学研究科, 准教授 (60261715)
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キーワード | デンドリマー / 液晶 / ディスプレイ / 配向膜 / 垂直配向 / ホメオトロピック / ネマチック液晶 / 応答時間 |
研究概要 |
液晶の配向制御に液晶性デンドリマー(LCD)を用いることで、配向膜を用いない新しい液晶ディスプレイを提案しており、ポリプロピレンイミンデンドリマー末端にアルキルスペーサーを介して液晶基としてシアノビフェニル基(LCD2-6P_2CN)、ペンチルシクロヘキシルフェニル基(LCD2-6PC5)、ジフェニルエーテル基(LCD2-6PBN)、末端にフッ素基、メトキシ基を置換したビフェニル基(LCD2-6P_2F、LCD2-6P 2F 3、LCD2-6P_2M)を導入した合計六種類のLCDを合成した。これらのLCDは液晶ディスプレイ用液晶に溶解したが、特にLCD2-6PC5はシアノ系とフッ素系の両液晶にも高い溶解性を示した。六種のLCDとも熱分解温度が250℃以上でディスプレイ使用温度域では十分な熱安定性を示すことを確認した。偏光顕微鏡、熱解析およびX線回折による液晶構造解析より、LCD2-6P_2F_3は非晶性であるが、他の五種のLCDは室温から広い温度域でスメクチック液晶性を示すことを確認した。これらの5種のLCDは液晶セル内で低分子液晶のホメオトロピック(垂直)配向を誘起するが、特にLCD2-6PC5が様々な液晶に対して強い垂直配向誘起効果を示した。電界印加・時に液晶分子を基板に平行に配列させる櫛型電極セルにLCD2-6PC5とディスプレイ用液晶を注入して、明暗表示の応答性について検討した結果、10Vの電界on-offにて比較的高速な明暗表示が実現できた。LCDの濃度(0.1~15重量%)の増加に伴い垂直配向誘起効果が向上するが、強いアンカー効果により応答時間は濃度と共に増加した。従って、透過率と応答時間のバランスから、LCDの濃度は0.5~1重量%が適切と見出された。以上の結果より、LCDは垂直配向剤として液晶ディスプレイに使用でき、パネル作製のPI配向膜工程の削減が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液晶性ディスプレイに採用可能な液晶性デンドリマーの分子設計に関する知見が得られ、当初の目的である応答性の高い液晶性デンドリマー開発が出来た。'さらに、デンドリマー濃度と応答性能に関する系統的な知見も得られ、本年度の研究の目的を達成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を踏まえて、更に液晶ディスプレイ特性の検討を系統的に行うために、液晶性デンドリマーの大量合成を行う。その合成と精製条件を検討する。液晶性デンドリマーがポリイミドに代わる配向誘起剤として機能させるために、ガラスやITOさらにはプラスチック基板上での垂直配向性を示すメカニズムを解明する。AFM、薄膜X線回折によるデンドリマー薄膜の構造解析、表面自由エネルギーの異なる基板上での垂直配向効果に関する検討からアプローチする。液晶ディスプレイの基本的性能である応答速度、コントラストなどについて、デンドリマーの濃度や分子構造の観点から更に詳細に検討する方針である。
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