研究課題
液晶の配向制御に液晶性デンドリマー(LCD)を用いることで、ポリイミド配向膜を用いない新しい液晶ディスプレイを提案している。これまでの結果より、ポリプロピレンイミンデンドリマー末端にアルキルスペーサーを介して液晶基としてペンチルシクロヘキシルフェニル基を導入したLCD(LCD2-6PC5)が高い液晶配向制御性を示し、良好な液晶素子特性を示すことから、素子評価用として大量合成した。更に液晶への溶解性や電気的性質を考慮して、液晶基にフッ素基を導入したLCD2-6P2F2O6を新たに合成しその性能を検討した。ガラス基板、ITO、絶縁膜塗布基板で構成した液晶セルに、LCD2-6PC5を液晶に1重量%溶解させた混合液晶を注入した結果、いずれの液晶セルでも全体に均一な垂直配向を示すホメオトロピック配向が認められた。更にITOと絶縁膜液晶セルでは電界印加による良好な明暗表示を確認した。この混合液晶はアクリルアミドや側鎖タイプの透明高分子基板上で垂直配向を示し、また、ITO塗布ポリカーボネート基板の液晶セルでは良好なホメオトロピック配向を形成し、電界印加による明暗表示が確認され、プラスチック基板化の可能性が見出された。LCD2-6P2F2O6と液晶の混合物においては、LCD2-6PC5の系より液晶セルの透過率・応答速度ともに向上し、フッ素基導入の効果が認められた。さらに、これらの液晶セルの熱安定性を検討した結果、マトリックス液晶と同等の温度域までネマチック液晶状態を維持し、明暗表示を示すことが確認され、液晶ディスプレイとしての実用性能を有することが実証できた。以上の結果より、本研究で提案しているデンドリマ-液晶添加液晶セルは、ポリイミド配向膜が無くても実用的な表示性能を示し、かつプラスチック基板化の可能性も見出された。
2: おおむね順調に進展している
メソゲン構造および末端の分子構造が異なる液晶性デンドリマーを7種類合成し、その垂直配向性と液晶への垂直配向誘起効果と分子構造との関係性を明らかにするとともに、表示素子性能に優れた2種類を選択してその表示素子性能を評価できた。液晶性デンドリマーはポリイミド配向膜と同等の応答性さらに熱安定性を有することが確認され、液晶性ディスプレイに採用可能な実用性能を有することが実証できた。さらに透明プラスチック基板でも液晶表示性能を確認しプラスチック基板化の可能性が見出され、本年度の研究の目的を十分に達成することができた。
これまでの成果を踏まえて、合成した種々の液晶性デンドリマ-について液晶表示性能を比較し、分子構造と表示特性の相関性を明らかにするとともに、複数の液晶性デンドリマ-の混合系での検討を行い、表示性能を調整する基板表面改質法について考察する。液晶性デンドリマーの各種基板上における配向性を、基板の表面特性および表面処理した基板などの情報から系統的に検討するとともに、コンピュータシミュレーションの手法を用いて垂直配向性および液晶の垂直配向誘起効果のメカニズムを解明する。加えてAFM、薄膜X線回折によるデンドリマー薄膜の構造解析から各種基板上の液晶性デンドリマ-薄膜の評価法を確立する。以上の検討から実用特性を備えた液晶性デンドリマ-と液晶表示素子の開発を目指す。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 2件)
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