研究課題/領域番号 |
23350111
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
下村 武史 東京農工大学, 大学院・工学研究院, 准教授 (40292768)
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キーワード | 導電性高分子 / ナノファイバー / 熱電変換 / ナノインプリント / ポリチオフェン |
研究概要 |
初年度はナノインプリントを用いたPATナノファイバーアレイの作製と評価を行った。 1[PAT混合レジストの調整とナノファイバー析出条件の検討]レジストであるポリメタクリル酸メチル(PMMA)とポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3AT)に溶媒を加えて加熱攪拌し、PAT混合レジストを調整した。次に、混合レジストを洗浄したガラス基板にスピンコートで成膜し、現有設備である原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、モルフォロジーの確認を行った。添加溶媒によってナノファイバーの形成の有無が、P3HT/PMMA比によってナノファイバーの凝集状態やネットワークの形成状態が大きく影響されることを見出し、ネットワークを形成しかつ凝集が少ない条件を決定した。 2[ナノインプリントによるPATナノファイバーアレイの作製]調整した混合レジストを用いて、鋳型を押しつけながら、熱ナノインプリントを行い、P3HTナノファイバーアレイを作製した。鋳型の転写は新規に導入するナノインプリント装置を用いて行った。AFMを用いてナノインプリントの転写精度の確認を行ったところ、100nmまではほぼ鋳型通りの転写ができていることが確認された。 3[PATナノファイバーアレイの構造と電気物性評価]ナノインプリント前のコンポジットフィルムおよびP3HTナノファイバーアレイの両端に電極をつけ、導電率の評価を行った。ナノインプリント前のコンポジットフィルムではネットワークの発達とともに導電率の上昇が観察された。導電率も0.001S/cm程度と期待された値となる条件が確認され、さらに測定システムを整備し、熱電変換の測定を試行してみたところ、起電力が観察され、ゼーベック係数も得られた。一方、P3HTナノファイバーアレイはファイバーネットワークが十分につながっておらず、導電率を得るまでには至らなかったため、今後、最適な条件をさらに探索する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノファイバーのネットワーク形成に最適な条件を決定し、その導電率を測定するとともに、初年度には予定していなかった熱電変換特性の測定を試行することができた。この点において計画以上に進展した。一方、P3HTナノファイバーアレイの作製に成功したが、その電気特性は十分に得られておらず、さらなる条件検討が必要であった。この点ではやや計画より遅れている。以上を総合的にみておおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の結果から、ナノファイバーがアレイ内で配列することで、ネットワークの接続が不良になっていると考えているため、P3HTの分量をレジスト調整時に増やして、作製を実施することで、初年度の問題点を解決する。その後は、初年度に整備した熱電変換測定用のシステムを用いて、ナノファイバーアレイのゼーベック係数、導電率、熱伝導率を測定し、熱電変換特性を評価していく。
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