研究概要 |
本研究は流動下での高分子の緩和を明らかにすることを目的とする.具体的には,1)ポリイソプレンに対する流動下での粘弾性緩和/誘電緩和実験,2)粗視化分子モデルである3次元スリップスプリングモデルの開発,により,流動下での高分子の運動を分子レベルで解明する.本年度は,1)においては,試料を作成し,流動下での粘弾性緩和測定をsuperposition法(定常せん断流動場に微小変形を重ねあわせて粘弾性緩和を測定する方法)で試行した.まずレオメーターの改造が不要なparallel superposition法(定常せん断流動場と微小変形の方向が同じ方法)で試行したところ,緩和の加速を観測した.また流動場の均一性を確認するためにparticle tracking velocimetry(微粒子を分散させて速度場を直接観察する)を行った.その結果,parallel superposition法により緩和の加速が観測された条件では,流動場の均一性が担保されることを確認した.さらに,条件によっては先行文献にあるシアバンディングも観測されることを碓認した.シアバンディングについては流体計算からも条件を検討した.一方,2)においては,申請者が開発しているプリミティブチェーンネットワークモデル(からみあいだけで系を記述するモデル)の検証を行い,高速流動下で形態緩和の予測に問題があることを確認した.一方で,高速流動下において,分子の摩擦係数が変化する場合があることを見いだし,報告した.あわせてスリップスプリングモデルの3次元拡張(Rouse鎖をスリップするバネで接続したモデル)を理論的に定式化し,シミュレーションプログラムの作成と試行を開始した.
|