研究概要 |
本研究は流動下での高分子の緩和を明らかにすることを目的とする.流動の効果で分子の緩和が加 速されるとする理論が提案されている一方,測定量によっては緩和の加速が観測されない場合があり,統一的な 理解がなされていない.本研究は1)ポリイソプレンに対する流動下での粘弾性緩和/誘電緩和実験,2)粗視 化分子モデルである3次元スリップスプリングモデルの開発,により,流動下での高分子の運動を分子レベルで 解明することを目論んでいる.本年度で特筆すべき成果として,本研究課題において特に重要な3次元スリップスプリングモデルの開発に成功したことがあげられる.(Uneyama & Masubuchi, J. Chem. Phys. (2012) 137, 154902).さらにモデルの構造をチェックするために別の計算手法においても妥当性を検証した(Langeloth et al, J. Chem. Phys. (2013) 138, 104907).この他,粗視化レベルの低い模型での計算機シミュレーションにより大変形下で分子摩擦の変化があることを実証(Masubuchi et al, 日本レオロジー学会誌 (2013) 41, 33),先に開発済みの粗視化モデルにおいて分子間の相関が無視できないことを報告(Masubuchi & Sukumaran, 日本レオロジー学会誌 (2013) 41, 1),からみあいの少ない系での大変形下での緩和メカニズムを検討(Furuichi et al, 日本レオロジー学会誌 (2013) 41, 13)を行なった.これらの知見を今後統合する.一方,実験面は予備的な検討にとどまっている.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実績概要にあげたように,本研究で最も重要な3次元スリップスプリングモデルの開発に成功した(Uneyama & Masubuchi, J. Chem. Phys. (2012) 137, 154902)(Langeloth et al, J. Chem. Phys. (2013) 138, 104907).今後モデルの細部の検討が必用ではあるが,骨格となるモデルの構築が予定通り進んだことによって,研究上の壁はひとつ乗り越えたといってよい.今後の研究も予定通り遂行できる見込みとなった.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度開発したモデル(Uneyama & Masubuchi, J. Chem. Phys. (2012) 137, 154902)(Langeloth et al, J. Chem. Phys. (2013) 138, 104907)を用いてさらなる検討を行う.実験面は装置系の予備的な検討にとどまっているので予定通り進行させて結果を得る.
|