研究課題/領域番号 |
23350114
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
南 秀人 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20283872)
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研究分担者 |
鈴木 登代子 神戸大学, 工学(系)研究科(研究院), 助手 (40314504)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | イオン液体 / セルロース微粒子 / コロイド / 高分子微粒子 |
研究概要 |
本研究は,新規な環境適応型媒体・機能性物質として注目されている“イオン液体”を不均一系での高分子微粒子合成媒体に適応し,コロイド及び,界面化学の観点から水や有機媒体系と比較によりその特徴を明らかにするなかで,通常の媒体とは異なる不均一系での機能性高分子微粒子合成概念を確立することを目的としている。 本年度は特に,水やほとんどの有機媒体に不溶なため,形状制御や加工は困難であったセルロース微粒子に焦点を当てた。イミダゾリウム系イオン液体のイオン液体が前処理を施すことなく100˚C程度の加熱で簡便に溶解させることが報告されて以来,セルロースの新たな加工媒体として期待されている。申請者らは,セルロース微粒子の形態制御を目的とし,セルロースのイオン液体溶液の分散滴を作製後,分散滴からイオン液体を除去,セルロースを析出させることでセルロース微粒子の作製を試みた。用いるイオン液体希釈剤やそれらの放出条件により,作成されるセルロース粒子の形態は大きく異なった。真球状粒子が得られた条件にて,分散滴からのイオン液体及び希釈剤の放出過程(=セルロースの析出過程)を経時観察したところ,分散滴成分の9割以上が放出されセルロースが析出しても,分散滴の大きさは変わらず,光学顕微鏡では観察されないナノ構造体を形成している可能性が示唆された。本年度に設備備品として購入した紫外可視近赤外分光光度計を用いたところ,析出したセルロース粒子は260 nm付近に吸収ピークが認められ,微細構造の存在が明らかとなった。さらに,凍結乾燥を行い,SEMにて観察すると,緻密構造ではなく非常に微細な多孔質構造が観察された。この微細構造は溶媒の毛細管圧によって容易に破壊されたが,凍結乾燥条件を整えることにより生成したセルロース多孔質粒子は,強度が大きく,セルロース複合材料創成の可能性を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微細構造の可能性は間接的に示されていたものの確証が得られずにいたが,本年度導入した紫外可視近赤外分光光度計によりその存在が示され,凍結乾燥機を用いたことにより,微細構造を観察することも可能となった。また,昨年度に検討テーマのひとつとして着手したイオン液体ポリマーに関する検討においても,汎用ポリマーと同様の扱いでの複合系を中心に検討に取り組み,コアシェル構造など複合粒子のモルフォロジイ制御に関する重要な知見を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
イオン液体を利用した微細構造を有するセルロース粒子の作製については,作製条件および凍結乾燥条件をシビアに制御しなければならないため,より簡便な作製条件を見出すとともに,用いるセルロースの種類(由来成分,分子量,結晶化度など)による検討を進めたい。また,イオン液体ポリマー複合粒子についてはイオン液体由来の機能(導電性や二酸化炭素吸収能)発現に向け,解析を行う予定である。 さらに,これまでの2年間は,イオン液体と特色ある媒体として利用した研究に特に取り組んできた。本年度はもう一つの目的であった,イオン液体を利用した微粒子材料の機能化に関する研究について主として取り組む。特に,イオン液体部をラジカル重合基の側鎖として有するイオン液体(モノマー)ポリマーに焦点を当てる。具体的には,様々なイオン液体ポリマー微粒子の材料化を見据え,次の3点の重合方法を行う。①粒子径・粒子径分布の制御を目的とし,分散重合によりミクロンサイズで単分散なイオン液体ポリマー微粒子の合成を試みる。②PIL複合化に関する基礎的知見獲得を目的とし,汎用高分子であるポリスチレン(PS)及びポリメタクリル酸メチル(PMMA)をシード粒子として用い,イオン液体モノマーのシード分散重合を行うことで未だ報告例のない汎用高分子/PIL複合微粒子の合成も試みる。③PILの粒子化において適用可能な重合法の拡大を目的とし,学術的,工業的に広く用いられている乳化重合への適用とその重合条件の最適化について検討を行う。また,これらの重合により得られたPIL微粒子に関するイオン液体性及び粒子物性に関する検討を併せて行う。 これらの研究を通して,イオン液体の特徴であるイオン導電性や不揮発性を利用した微粒子材料の機能化法の確立へと発展させる
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