研究課題/領域番号 |
23350115
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
栗原 清二 熊本大学, 自然科学研究科, 教授 (50225265)
|
研究分担者 |
金 善南 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (00612532)
桑原 穣 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (60347002)
緒方 智成 熊本大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90332866)
尾崎 良太郎 愛媛大学, 理工学研究科, 准教授 (90535361)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | フォトニック結晶 / 1次元周期構造体 / 反射光オンオフ制御 / ホメオトロピック配向 / アゾベンゼン高分子 / ポリフマル酸エステル / ポリイタコン酸エステル / 構造色 |
研究概要 |
ポリビニルアルコール(PVA)膜上で、加熱により垂直配向性を示すアゾベンゼン高分子液晶(PAzo)を用い、PAzo とPVAの膜厚を精密に制御して作製した構造色を示す交互積層膜は、加熱と光照射による構造色のOn-Off 特性を示す。この構造色のOn-Offの可逆的繰り返し特性、メモリー性を利用した加筆・消去可能な電子ペーパーの開発を目指し、本研究では、光応答性の向上と、視認性向上のための構造色の反射光角度依存性の解消を理論・実験両面から検討することを目的としている。 光応答性の向上に関する研究に関しては(検討項目1)共重合による光反応性の向上と(検討項目2) アゾベンゼン側鎖をより多く有する多置換ビニル誘導体からの高分子合成とその物性評価という2つの観点から検討した。(検討項目1)に関しては、表面近傍のアゾベンゼン高分子層による光吸収による光反応性の低下を抑制するために、アゾベンゼン基とビフェニル基の共重合体(アゾベンゼン基:ビフェニル基=10:0、6:4、4:6)を合成し、光応答性を評価したところ、6:4の共重合体が光書込・消去速度とも良好であることが明らかとなった。また、(検討項目2)に関しては、ビニル基ユニットにアゾベンゼン側鎖を2つ有するポリイタコン酸エステルと、同じアゾベンゼン側鎖をビニル基ユニットに一つ有するポリアクリル酸の光応答性を比較評価したところ、ポリイタコン酸の方がわずかではあるが、光配向性に伴う複屈折率変化が大きくなることが明らかとなった。 また、反射光角度依存性の解消に関しては、ポリジメチルシロキサン上に構造色を示す多層膜を作製し、膜を圧縮することで、凹凸を形成させることで反射光の角度依存性の解消効果を評価した。圧縮方法など実験的に課題があるものの、圧縮することで凹凸を形成でき、わずかではあるが反射光の角度依存性を抑制することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
光応答性の向上に関しては、前年度のスペーサーの検討結果より最も光応答性の良好であったヘキサメチレンスペーサーを有する共重合体を合成し、光応答性を評価したところ、適切な割合での共重合により光応答性を向上できることが明らかとなり、光応答性側鎖を多く有する2種類の高分子においても光応答性の向上効果が見出された。 反射光の角度依存性に関しては、多層膜にマイクロリンクル(凹凸)構造を付与することでわずかではあるが改良効果が見られた。
|
今後の研究の推進方策 |
共重合により光応答性の向上効果が確認されたが、共重合したビフェニル基の屈折率がアゾベンゼン基よりも小さいために、ポリビニルアルコール層とアゾベンゼン共重合体層の屈折率差が小さくなり、反射光の低下が見られた。より屈折率の高い分子との共重合体の合成により、高い反射率を保持したまま光応答性の向上を目指す。 マイクロリンクル構造の付与する実験手法が確立できていない。実験手法を確立し、反射光の角度依存性に及ぼすマイクロリンクル構造の影響を精査する。
|