研究課題/領域番号 |
23350116
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
陸川 政弘 上智大学, 理工学部, 教授 (10245798)
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キーワード | ブロック共重合体 / 触媒移動型重縮合 / Ni(0)カップリング重合 / ミクロ相分離 / プロトン / 導電率 / ジブロック / 電解質 |
研究概要 |
(1)精密なブロックユニットの合成 Ni(0)カップリング重合反応の反応条件(配位子、反応温度、触媒など)を検討することによって、分散度を2以下に抑えた精密なブロックユニットの合成を試みたが、モル質量分散度が2.0以下のブロックユニットを合成することはできなかった。一方、触媒移動型重縮法と原子移動ラジカル重合法を用いることで、モル質量分散度が1.20以下の親水ブロックおよび疎水ブロックの合成が可能になった。Ni(0)カップリング重合反応と芳香族求核置換反応によってブロック共重合体を合成し、その疎水部が力学的特性に与える影響を検討した。疎水部を嵩高く、かつ非対称構造にすることで柔軟性を付与することに成功した。 (2)系統的マルチブロック体の合成 触媒移動型重縮合法を用いて、親水ブロック組成の異なるジブロック共重合体を系統的に合成した。精密なブロック体の導入により、ミクロ相分離構造が明瞭化した。さらに親水ブロックの組成を変化することでミクロ相分離構造をジャイロイド、球、ラメラ、シリンダー状に制御できることが明らかになった。これらの構造体を用いて、構造と膨潤性、導電率の異方性の関係を明らかにした。 (3)ブロック構造のシーケンス制御 上述の系統合成を発展させ、トリブロック体の合成を試みた。親水、疎水の両ブロックからのマルチ化を可能にする条件を見出した。その結果、総分子量が8万程度の親水-疎水-親水、または疎水-親水-疎水トリブロック体の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
一般的な重縮合反応では、マルチブロック共重合体の分子量とその分布の制御を精度良く行うことができなかった。モノマー、特に親水性ブロック用のモノマーの化学構造を検討し、触媒移動型重縮合反応で重合可能なモノマーを見出し、数万程度の分子量を持つジブロック体とトリブロック体の合成に成功した。また、見出されたブロック共重合体が、予想以上のアイオノマー特性を示し、特許出願につながった。
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今後の研究の推進方策 |
触媒移動型重縮合法によって、系統的なジブロック体とトリブロック体の合成が可能になったので、さらに広範囲の組成のブロック重合体、高分子量体、マルチブロック体への合成に展開させたい。これにより、正確に親水性部位の組成とミクロ相分離構造の関係を明らかにし、最終的な目標である高次構造制御につなげたい。ここで問題となるのが、膜内部の構造評価である。透過型電子顕微鏡での評価は、試料作成に膨大な時間を使用するために効率的ではない。また、成膜条件が高次構造に大きな影響を与えると予想されるので、実験の再現性が求められる。対策として、小角X線回折、中性子小角散乱等を併用することで、効率的な解析を行いたい。
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