研究課題/領域番号 |
23360002
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松倉 文礼 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授 (50261574)
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キーワード | スピンエレクトロニクス / 半導体物性 / MBE |
研究概要 |
本研究では固体中のスピン流の諸性質を明らかにするために、スピン流の生成とその検出について研究を進めている。これによりスピン流の高効率な生成手法と高感度な検出手法の確立が可能になることと期待される。 平成23年度は、測定系の再構築を行うと同時に電気的に強磁性共鳴を誘起するための実験系の構築を予定した。主要物品の機材調達が間に合わず、一部内容を平成24年度に繰り越したものの、予定通りの成果を得ることができている。 得られた成果は、1. 強磁性共鳴を電気的に誘起し、電気的に検出することに成功した。得られた信号は電界効果及びスピン流によるトルクを考慮した計算によって再現可能であることを示した。2.歳差運動を介して生じる磁化の反転確率の外部磁界強度依存性を評価し、シミュレーションとの定量的比較を行った。 具体的には、備品として購入した全方位磁界プローバを用い、CoFeB/MgO磁気トンネル接合に高周波電界を印加することで強磁性共鳴を誘起した。強磁性共鳴を電圧により検出し、その信号が対称・反対称成分の合成で与えられることを示した。これらの信号が電界効果に加えてスピン流の影響を考慮することで再現できることを計算により示した。また、同様の素子においてパルス電界印加による磁化反転確率の外部磁界角度依存性を評価した。ここでの実験配置においては、外部磁界角度を変えることは面内磁界強度依存性を変えることに相当する。シミュレーションにより、反転確率は熱擾乱の影響を受けている可能性を示した。 上記成果は、論文投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の申請研究は繰り越しとなったものの、震災後の測定系の再構築と新測定系の構築は完了し、実験データの取得が継続的に加速して行われている。スピンポンピングと逆スピン・ホール効果によるp型半導体中のスピン流生成と検出、実験結果の解析手法について平成24年度のテーマとして並行して進めている。これまでに、逆スピン・ホール効果によると考えられていた信号の大部分が電流磁気効果に起因することを明らかにした。本研究で確立した解析手法は今後様々な材料に適用されるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で確立した実験手法・解析手法が材料によらず適用可能であることを明らかにすることは、本研究成果の意義を問うために重要である。金属を含む材料系を用いた研究に着手する。また、新規スピン流現象の観測が期待されるg因子・スピン軌道相互作用の大きい狭禁制帯半導体材料系を用いた研究にも着手予定である。
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