研究概要 |
本研究では固体中のスピン流の諸性質を明らかにするために、スピン流の生成とその検出について研究を進めている。これによりスピン流の高効率生成手法と高感度検出手法が可能になるものと期待される。 平成24年度、(Ga,Mn)As/p-GaAsの二層系において研究を進めた。(Ga,Mn)Asが強磁性共鳴状態にある時のスピンポンピングによるスピン流生成と、p-GaAs中の逆スピン・ホール効果によるスピン流の電気的検出を行った。(Ga,Mn)Asの強磁性共鳴スペクトルが観測された際に、p-GaAs中において明確なdc電圧が観測されることを見出した。(Ga,Mn)As単層試料においてもdc電圧が観測され、逆スピン・ホール効果以外の寄与の存在が明らかになった。これらの信号をランダウ-リフシッツ-ギルバード方程式に基づき磁化の動的運動を考慮して解析した。これにより、対称信号は電流磁気効果と逆スピン・ホール効果、反対称信号は電流磁気効果によることを示した。定量的解析により、観測されたdc信号の大部分は電流磁気効果に起因するものであり、その内の約1割がスピン流生成に起因するものであることを明らかにした。 このことは、スピン流の定量的評価には、電流磁気効果の定量的評価が必要であることを示している。ここで確立したスピン流の定量的評価手法は、(Ga,Mn)As系のみならず、様々な材料に適用可能であると考えられる。
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