研究概要 |
24年度は重い電子系超伝導体CeCoIn5と通常金属であるYbCoIn5からなる超格子について上部臨界磁場(Hc2)の測定を行い、界面での空間反転対称性の破れに起因する特異な現象が観測された。(Phys. Rev. Lett., 109, 157006 (2012)) YbCoIn5を5層とし、CeCoIn5層の厚さ(n)を変えた場合に、n≧4ではHc2の磁場印加角度依存性がPauli効果に従うものであったが、n=3ではPauli効果が抑制され、軌道効果が顕著に現れてくることが明らかになった。これはn=3の場合では上下の界面層で空間反転対称性が破れ、スピン―軌道相互作用が効いてくることで、界面に特有な現象が支配的になり、バルクとは本質的に異なる新奇な超伝導状態が実現していることを示すものである。 CeCoIn5では反強磁性揺らぎを媒介とした非従来型の機構により超伝導が発現するが、CeをLaなどの非磁性不純物元素により置換することで超伝導状態が強く抑制される。ところが、最近のバルク単結晶による実験では、CeサイトをYbで置換する(Ce1-xYbxCoIn5)とLa置換の場合と異なり、Ce、Ybの価数揺動が超伝導性に影響するという新しい機構を導入する必要があることが指摘され、重い電子系超伝導における重要問題となっている。バルク単結晶では相分離を示唆する異常な振る舞いが見られている。バルクよりも結晶成長温度を低くし、一様な固溶状態を実現可能なMBE法によりCe1-xYbxCoIn5 系を作製した。薄膜の結果はCeサイトをYbで置換することで、不純物散乱による影響が支配的になり、反強磁性揺らぎの寄与が低下しているとする従来の機構で本系も説明可能であることが示された (Phys. Rev. B, 86, 144526 (2012)) 。
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