研究概要 |
25年度は前年度に達成した重い電子系超伝導体CeCoIn5と通常金属であるYbCoIn5からなる超格子における空間反転対称性の破れの制御をさらに進展させることに成功した。CeCoIn5とYbCoIn5からなる超格子においてはYbCoIn5と隣り合うCeCoIn5層は空間反転対称性が破れることになる。前年度においてはYbCoIn5を一定の厚さにし、CeCoIn5の厚さを3層以下とすることで、空間反転対称性の破れたCeCoIn5層の割合を大きくし、この場合に上部臨界磁場の磁場印加角度依存性がバルクにおけるPauli効果に従うものから、界面特有のRashba型スピン-軌道相互作用が効くことによる、軌道効果に従うものに変化することを明らかにした(Phys. Rev. Lett., 109, 157006 (2012))。25年度はYbCoIn5の厚さに変調を加えることで(例えば・・CeCoIn5(5層)/YbCoIn5(8層)/ CeCoIn5(5層)/YbCoIn5(2層)・・)、CeCoIn5層に対してグローバルな空間反転対称性の破れを導入し、CeCoIn5の界面層だけに空間反転対称性の破れを導入した場合よりも上部臨界磁場に対するPauli効果の寄与を大きく抑制することに成功した(Phys. Rev. Lett.,(2014) 印刷中)。この結果は重い電子系において人工超格子による空間反転対称性の破れの人工制御が新奇な超伝導状態を実現するために有力な手段になることを実証したものである。
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