研究課題/領域番号 |
23360011
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
森 勇介 大阪大学, 大学院・工学研究科, 教授 (90252618)
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研究分担者 |
吉川 洋史 大阪大学, 大学院・工学研究科, 招聘教員 (50551173)
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キーワード | レーザー分子注入法 / タンパク質 / レーザー核発生 / 溶液撹拌 / ゲル |
研究概要 |
(1)分子注入法によるタンパク質分子高濃度化の実証 モデルタンパクであるニワトリ卵白リゾチームをCoomassie Brilliant BlueR-250 (CBB-R)を用いて染色し、タンパク質の存在量を色の濃淡で可視化した。そして、フェムト秒レーザー(波長800nm,パルス時間幅182fs)照射後のゲル-溶液界面においてキャビテーション及び、この染色リゾチームがどのような挙動をとるか、高速カメラを用いて観察した。その結果、レーザーを溶液側に照射した場合、ゲル側に照射した場合どちらにおいてもタンパク質の濃集領域の形成が確認され、レーザー照射により分子がゲルに注入されることが示された。 (2)分子注入法によるタンパク質結晶核発生誘起効果の実証 (1)に示す2通りのレーザー照射をした後、タンパク質濃度が高くなった領域を遠続的に観察したところ、タンパク質が濃集した領域でのリゾチーム晶出確率が有意に高いことが確認された。特にゲル側照射した場合には、タンパク質の注入位置に結晶が晶出する様子が捉えられている。また、モデル物質として、有機低分子であるパラセタモール(タンパク質より核形成までの待ち時間が短い)を用いて同様の実験を行ったところ、ゲルー溶液界面から次々に晶出する様子をその場観察することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度~25年度までの期間に進める予定であった3項目のうち、既に2項目がほぼ達成されている。タンパク質分子を染色することで、ゲル中への分子注入を直接視覚化した。また、モデル物質として鶏卵白リゾチーム(タンパク質)、およびパラセタモール(有機低分子)の核形成が誘起されることも示されている。
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今後の研究の推進方策 |
鶏卵白リゾチームおよびパラセタモール以外の物質として、グルコースイソメラーゼやインシュリンなど、他のタンパク質でも同様の核発生確率の向上および核発生位置の制御が可能かどうかを確認していく。特に、異なる物質に見られる共通の現象を見出すことが今後の技術高度化への鍵になる。 ごく微小量しか入手ができない難結晶化タンパク質に本技術を適用するためには、シッティングドロップ法やハンギングドロップ法の結晶化プレートでもレーザーを照射できるように装置を改造する必要があり、現在装置改造が進行中である。ハードが整い次第、順次実験を進めていく。
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