研究課題/領域番号 |
23360016
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研究機関 | (財)高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
鈴木 基寛 (財)高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (60443553)
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キーワード | 磁気記録 / 放射線、X線、粒子線 / 磁性 |
研究概要 |
次世代の高密度磁気記録材料であるビットパターン媒体の単一磁気ドットについて、放射光X線ナノビームを用いた原子レベルでの磁気特性解析を実現することを目的とし、平成23年度には以下の研究を行った。 1.ナノXMCD装置の開発 SPring-8 BL39XU磁性材料ビームラインにおいて、X線ナノ集光ミラーおよびミラー位置決め機構の立ち上げ調整を行った。集光ビームサイズ120×100nmを達成し、集光スポット中の光子数を6×10^9photons/sと見積もった。仮想光源スリットの条件を変えることで、300×250nmの集光スポット中に1.7×10^<12>photons/sという大強度の集光X線ビームが得られることも確認した。この明るい集光ビームは、統計精度が要求されるX線磁気円二色性(XMCD)によるナノ磁気解析に効果的に利用することができた。X線ナノ集光ミラーとともに使用する専用電磁石を開発した。電磁石磁気回路の設計を工夫することで、10cmの作動距離以内に電磁石を設置するという条件を満たしながら、H=2.0Tという高磁場を得ることができた。また、複数の光電子増倍管とプラスチックシンチレータを組み合わせることで、広い検出立体角をカバーする多素子X線検出器を自作した。 2.ビットパターン媒体のナノ磁気観察 CO_<80>P^t_<20>合金膜を直径200nmの円盤状に加工した磁気ドットについて、X線ナノビームによる磁気観察を試みた。上述した300×250nmの集光X線ビームを用いることで、単一の磁気ドットについて、Pt L_3吸収端において10%程度の信号強度を有する)XMCDスペクトルを取得した。外部磁場を変化させてXMCD信号を測定することで、単一ドットの磁化曲線を取得し、一斉磁化回転型の急峻な磁化反転が起こっていることを直接観察によって明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
CO_<80>Pt_<20>ナノ磁気ドット試料についてXMCD磁化測定を行い、単一ドット素子の磁気ヒステリシス曲線を得ることができた。現時点で観察を行えた試料サイズは200nmと比較的大きいが、本研究課題の第一目標であった単一素子の磁気解析を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、(1)観察可能な磁気ドットサイズの縮小:50nm~100mmの磁気ドットの観察を来年度の目標とし、最終年度には25nmドット(1 Tbit/in^2相当)の観察を目指す。そのためには、集光X線ビームの大強度化や安定化が必要となる。また、検出器の高効率化も重要である。(2)L1_oFePt合金ドットの観察:今年度に行ったCoPt合金ドットだけでなく、より磁気異方性や保磁力の高い、L1_oFePt磁気ドットの観察を行う。このために、本年度に整備した高磁場電磁石を活用する。(3)高温下での観測:エネルギーアシスト磁気記録条件に相当する高温下での磁気ドットの磁気特性解析を試みる。そのための試料加熱機構の導入を検討する。
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