研究課題/領域番号 |
23360016
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
鈴木 基寛 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 主幹研究員 (60443553)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 磁気記録 / 放射線、X線、粒子線 / 磁性 |
研究概要 |
次世代の高密度磁気記録材料であるビットパターン媒体の単一磁気ドットについて、放射光X線ナノビームを用いた原子レベルでの磁気特性解析を実現することを目的とし、平成24年度には以下の研究を行った。 1.ナノXMCD装置の開発 SPring-8 BL39XU磁性材料ビームラインにおいて、平成23年度に整備した高磁場電磁石および多素子X線検出器の性能試験、試料加熱用レーザーの導入を行った。電磁石が順調に稼働することを確認し、これにより最大磁場2.3 Tの条件下で、100 nm サイズのX線集光ビームを用いたX線磁気円二色性 (XMCD) によるナノ磁気解析を可能とした。電磁石の発熱による試料位置のドリフトが観測され、これを低減させるための温度安定機構を付加する必要があることが分かった。複数の光電子増倍管とプラスチックシンチレータを組み合わせた多素子X線検出器の試験を行った。シンチレータの量子効率が事前の見積もりよりも低く、光電子増倍管の印加電圧を最適化することで感度低下を補う必要がある。試料加熱用の赤色レーザーを導入し、試運転を行った。 2.ビットパターン媒体のナノ磁気観察 昨年度に引き続き、Co80Pt20合金膜を円盤状に加工したナノサイズの磁気ドットについて、X線ナノビームによる磁気観察を試みた。直径25ナノメートルの単一磁気ドットについて元素選択的磁化曲線を得ることができた。直径の異なる25nmから200nmまでの磁気ドットについて、ドットサイズと保磁力(反転磁界)との依存性を観測した。また、磁化反転近傍での磁化曲線の振る舞いから、微細加工する際の磁気的ダメージを評価できる可能性を見出した。これにより、当初の研究目的のうち主要な部分を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Co80Pt20ナノ磁気ドット試料についてXMCD磁化測定を行い、直径25 nm の単一ドット素子の磁気ヒステリシス曲線を得ることができた。前年度観測できたサイズ200 nm とくらべてより小さなドットの観察を可能とした。このドットサイズは、本研究で観察目標としている 1 Tbit/in2 の磁気記録密度に相当する。このように、CoPtドットの観測については順調に進展している。一方で、高温下での測定法の開発は当初予定よりもやや遅れている。また、FePt製の磁気ドットの観測も未着手であるため、これらの点では当初の目標よりも達成が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策として、以下の計画に沿って最終年度の研究を遂行する。 1.ナノXMCD装置開発 平成25年度から稼働した強磁場電磁石について、発熱による試料位置ドリフトを抑制するための恒温槽あるいは温度補償機構を付加する。これにより、強磁場下での安定な磁気イメージング測定を実現する。試料加熱用レーザーについて、平成25年度の前半にはレーザー光を試料位置に導くための光学系を整備する。同時に、試料温度を計測するための熱電対を付加するなど試料周辺を整備する。平成25年度秋を目処に高温下でのナノ磁気特性解析を可能とする 。 2.ビットパターン媒体のナノ磁気観察 平成25年度には、試料を加熱したキュリー温度近傍の条件下での磁気特性評価を行い、レーザーアシストを模擬した条件下での磁気的挙動の解析を目的とする。さらに、高温下でのFePtビットパターン媒体試料のナノ磁気特性解析を開始する。また、これまでに得られた実験データをまとめた投稿論文を作成する。
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