研究課題
(1)高周波の信号計測に対応した走査プローブを用いた磁気トンネル接合(MTJ)素子からのスピン注入発振の観測前年度に調整を行なった磁気共鳴用高周波プローブを用いて、MTJ(磁気トンネル接合)積層薄膜を用いてスピン注入発振を実現することを目指した。先ず、簡便に試料を作成できる系としてMTJではなく巨大磁気抵抗効果を示す磁性体/金属膜/磁性体の積層膜を作成した。この際、積層膜の最上層をAu 膜で保護することにより大気中の環境下での酸化を防いで用いた。探針から局所に電流を注入し磁性固定層でスピン偏極電流を生成し、磁性フリー層へスピン注入トルクを印加し高周波信号をモニターしたが、スピン注入発振に因る信の観測には成功していない。探針の先端形状や酸化の影響、ピエゾを用いた垂直位置制御のより高精細化が必要と判断し装置と制御プログラムを改良して整備した。 また、スピン注入発振とは逆の現象である、磁気共鳴からスピン偏極電流(スピン流)を得る手法を用いた研究より成果を挙げ、これらの手法を高周波プローブに応用することも検討した。(2)超高真空中で動作するスピン注入発振観測のための走査顕微鏡装置の整備大気中では酸化により、スピン注入が困難である問題を解決するために、超高真空中でスピン注入が観測可能な走査顕微鏡装置を整備した。このために、超高真空環境内にマイクロ波を導入し、高周波を計測するする機構と試料を待機に暴露すること無く搬送できる機構の整備を終えることができた。
2: おおむね順調に進展している
予定よりも装置の高周波化の整備に時間がかかる等、当初の計画に修正が生じた。一方で、当初懸念していた超高真空中へのケーブル等のマイクロ波部品のベーキングによる真空の悪化について、テフロン製ではなくポリイミド製を使用することで超高真空を保持することが可能になる等、着実に研究目的の実現へ向けて進展している。
(i)高周波対応プローブを用いた磁気トンネル接合(MTJ)素子からのスピン注入発振の観測今年度中に調整を行なった磁気共鳴用高周波プローブを用いて、MTJ積層薄膜を用い、スピン注入発振の実現に注力する。近年、MTJ 積層膜素子が購入することが可能となったこともあり、先ず、スピン注入発振の実現が保証されたMTJ素子を購入して発振信号の確認と調整を行い、その後、MTJ素子を自作してスピン注入発振の計測を実現する。MTJ 積層膜からのスピン注入トルクによる強磁性共鳴検出に成功した後には、サブマイクロメートルサイズの微小MTJ 素子を用いた高分解能観察に取り組む。(ii)超高真空中で動作するスピン注入発振観測のための走査顕微鏡装置の整備大気中では酸化によりスピン注入が困難となる問題があり、これを解決するために、超高真空中でスピン注入が観測可能な高周波走査プローブ顕微鏡装置を用いて研究を進める。このために、超高真空環境内にマイクロ波を導入し計測できる技術の整備を前年度までに終えており、平成25年度には、スピン偏極探針をスピン注入源として用いることも試み、ナノメートルスケールのスピン注入発振現象を捉えることに注力する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 備考 (1件)
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