研究課題/領域番号 |
23360019
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
佐々木 正洋 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80282333)
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研究分担者 |
山田 洋一 筑波大学, 数理物質系, 助教 (20435598)
朝岡 秀人 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (40370340)
関場 大一郎 筑波大学, 数理物質系, 講師 (20396807)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 水素吸蔵 / フラーレン / 電子ドープ / 吸着 / 脱離 / 超音速分子線散乱法 / 弾性反跳粒子検出法 / 中性子反射率計測 |
研究概要 |
電子ドープしたフラーレンと水素分子の結合エネルギーが比較的大きく、水素吸蔵材料となり得ることが理論的に予想されている。我々は、超音速分子線散乱(MBS)法を応用して、電子がドープされることが知られているC60/Cu(111)表面に水素が室温で吸着し、僅かの昇温で脱離することを明らかにした。本研究は、MBS法に加えて、走査トンネル顕微鏡(STM)観察、イオンによる弾性反跳粒子検出(ERDA)法、中性子反射率(NR)計測、光学歪みセンサー(MOS)計測を用いる事により、水素吸着の詳細を理解し、高性能水素吸蔵材料の設計指針を提案することを目的とする。 昨年度は、MBS法と昇温脱離法を組み合わせることにより、C60/Cu(111)表面上に吸着した水素は解離吸着していることを明らかにした。 本年度は、C60/Cu(111)表面から、他の類似の系、特に、単結晶金属表面に形成したグラフェンへの水素の吸着の系に拡張して、吸着の詳細を検討した。その結果、水素分子のままでは吸着しないものの、原子状水素を用いる事により、水素が室温で吸着し、600 Kへの昇温で脱離することを見いだした。この水素原子の吸着/脱離に際して、基板・グラフェン間の格子定数差に起因するモアレ構造には変化が無く、グラフェンの基本構造が維持されていることを示唆している。すなわち、構造の変化がなくても、電子状態の変調で水素原子の吸着が起こりうることを示している。水素吸着の機構を理解する上で重要な知見である。この他、MBS法以外の計測法の整備を進め、有機単分子膜とそこでの水素吸着の計測を可能にした。 来年度は、金属上C60、金属上有機単分子層、グラフェンに関して、他の手法を組み合わせて吸着水素を計測し機構解明をめざす。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
特に低温技術に関する超音速分子線源の高度化のための調整作業に想定以上の時間を要した。しかし、これを完了させた。また、23年の震災の影響もほぼ解消して、大型実験設備を利用した実験も可能になっている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定から遅れたものの、当初計画していた全ての測定手法が、本研究に対し適用可能な状態になった。最終年度に当たる今年度は、当初の予定に加え、昨年度に明らかになった知見を加えて研究計画を少し変更する。C60での実験に加えて、グラフェンに関して集中的に検討を行い、本研究の最終目的である、水素吸着機構解明を行い、有効な水素吸蔵材料の設計指針を提案する予定である。
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