研究課題/領域番号 |
23360020
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
種村 眞幸 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30236715)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ディスプレイ / ナノ材料 / トンネル現象 / 透明 / フレキシブル / イオン照射 |
研究概要 |
来るべきユビキタス社会のディスプレイに求められるキーワードは、「透明」、「フレキシブル」である。本研究では、イオンビーム手法を用いた独自のナノ材料室温作製技術を用い、電界電子放射型の高可視光透過率の、「フレキシブルで透明なディスプレイ」の開発を目的としている。本年度の具体的成果は以下の通りである。 1) 最適イオン種・イオン入射角の決定:透明フレキシブル基板であるAryLiteを用い、各種希ガスイオン種について、透明性、電界電子放射特性に優れる最適イオン種、入射角の決定を行った。透明性の観点からは、ナノ突起サイズは可視光波長以下に抑えられることが肝要である。その点を考慮し、斜入射を中心に最適化を行い、イオン種と入射角の組み合わせでアスペクト比約0.1から2以上のサイズ制御が可能であった。 2) ナノ突起の導電性制御:単一ナノ突起、ナノ材料の電子放射特性評価とそれに伴う結晶構造変化をその場で観察可能な透過電子顕微鏡システムを用いて、ナノ突起の結晶構造制御と電子放射特性その場評価を行った。鉄を同時供給することで形成された鉄含有の単一カーボンナノファイバー(CNF)では、電界電子放射によって、含有されていた鉄微粒子がCNF内で融合し、電子放射による電子流に従ってCNF先端へと移動することが見いだされた。その粒子移動の際、アモルファス状であったCNFがカーボンナノチューブ(CNT)へと結晶構造変化することも明らかにされた。この結晶構造変化に伴い、電子放射特性の顕著な向上も確認された。 3) 蛍光体膜の作製と発光波長制御:ガラス基板上に低温成膜された透明蛍光体膜について、電子放射源と組み合わせることで発光特性測定を行った。発光強度は弱いながらも発光が確認され、次年度、発光強度の向上と波長制御が課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に記載の事項が概ね実施でき、可視光の平均透過率が80%以上の透明フレキシブル電界電子放射素子を試作することができている。また、ナノ突起の導電性制御では、電界電子放射にともなうカーボンナノチューブ化のその場観察が世界で初めて観察されていることから。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の実験を継続し各要素技術の更なる高度化を図ると共に、それらを融合して、フレキシブル透明ディスプレイのプロトタイプ化を検討する。具体的には以下の通りである。 a) 前年度の実験の継続と各要素技術の更なる高度化:高い透明性、可撓性、電界放射特性を得るための最適ナノ突起の室温作製技術、導電性制御技術、カラー透明発光体膜作製技術を高度化する。とりわけ導電性制御技術開発では、ピエゾ微小駆動機構を有する試料ホルダーを用いた単一ナノ突起、ナノ材料の電子放射特性評価とそれに伴う結晶構造変化のその場透過電子顕微鏡観察システムを用いて更に精査する。鉄含有CNFの場合、鉄原子はCNF合成時に同時供給によって内包されたものであったが、H25年度は、CNF形成後に堆積させた場合についても検討する。併せて、種々の金属についても、電子流による結晶構造変化および電子放射特性の向上について精査する。蛍光体膜の開発では、昨年度に引き続き、可撓性を有する薄型ガラスあるいは透明高分子材料基板等を用い、蛍光体膜の成膜パラメータの調整およびドーパントの最適化による導電性の制御と発光特性制御を行う。発光特性の解析には、カソードルミネッセンス法等も活用する。 b) フレキシブル透明ディスプレイプロトタイプの検討:以上の実験結果を総合的に検討し、電界放射型(FED)のフレキシブル透明ディスプレイの試作を検討する。 c) 成果の公表と技術移転:本研究で得られた成果を整理し、報告書を作成すると共に、特許の取得、成果の国際会議報告、国際学術学会誌上への積極的な公表を行う。併せて、本技術を積極的にアピールし、事業化を目指す。
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